2020年09月25日 1642号

【新型コロナ対策本部「今後の取組」示す/「感染症法上の位置づけ」見直し/コロナの危険性 意図的引き下げ】

 政府の新型コロナウイルス感染症対策本部は8月28日、「新型コロナウイルス感染症に関する今後の取組」(以下、「今後の取組」)を決定した。

 「今後の取組」は切り縮められた医療の現状に合わせるため、感染症対策のレベルを落として新型コロナに対応しようというものだ。どういうことか、医療態勢に的に絞り、批判する。

2類から5類へは真逆

 「今後の取組」は「感染症法における入院勧告等の権限の運用の見直し」を掲げる。新型コロナ感染症が「結核やSARS、MERSといった2類感染症以上となっている」ことが問題だという。行政検査・追跡調査・隔離が必要な2類感染症としているから保健所・医療機関が過重負担となっている。だから、2類指定を外すべきだというのだ。

 感染症法では、感染症をヒトへの危険性に応じ1類から5類に分類し、入院等の措置を定めている。数字が小さいほど危険性が高い。

 それではどうしようというのか。加藤勝信厚生労働大臣は5類格下げを口にしている。5類感染症は季節性インフルエンザと同等。入院隔離、行政検査、積極的疫学調査もせず、医療機関からの患者発生報告は1週間ごとで済む。

 「今後の取組」は「リスクの低い軽症者や無症状者については宿泊療養(適切なものは自宅療養)での対応を基本とし、医療資源を重症者に重点化していく」ことで「医療供給体制の確保」をはかるという。2類感染症なら感染症指定医療機関に隔離・保護しなければならず、ホテルなどの宿泊療養・自宅療養は本来不適切のはずだが、5類にすれば感染症法に照らしても「適切な対策」となる。

感染拡大防止が最優先

 だが、新型コロナは5類でいいのか。季節性インフルエンザは潜伏期間1―2日、発症前の感染性は1日だけだ。数日で症状は引き、その後、3日もたてば感染性はなくなる。一方新型コロナは無症状者からも感染し、潜伏期間も長い。この特徴が収束を遠ざける一因となっている。感染症対策として監視を緩めることなどできないはずだ。

 「今後の取組」は「感染者のうち、8割は軽症または無症状のまま治癒するが、2割で肺炎症状が増悪(ぞうあく)し、人工呼吸器管理などが必要になるのは5%と言われている」ことを重視し、医療資源を重症者に特化すべしとも主張する。

 だが、肺炎は致命的となる場合もあり、決して軽く見てはならない。まして、原因となる新型コロナウイルスを直接叩く薬はなく、患者の回復力に依存するしかない。回復しても後遺症に悩まされる人もいる。感染者の2割が「肺炎症状が増悪」し、後遺症が問題となるのなら、まず、感染者を減らすことを最優先にすべきだ。感染を拡大させてはならない。

専用病床の新設を

 安易に宿泊療養や自宅療養にシフトする「今後の取組」は誤っている。自宅療養が家庭内感染を引き起こしたのは周知の事実だ。マンションはもちろん戸建て住宅でも気密性は高い。その住宅環境はウイルス培養器≠ニ化したダイヤモンド・プリンセスと変わらない。宿泊療養は、隔離者の分散をもたらし、医師・看護師を派遣する医療機関の重荷となりかねない。

 新型コロナの特徴は、しつこく長引き急変し、無症状でも感染する≠アとだ。感染者は無症状者も含め、病状悪化にも即対応できる専用病床に隔離・保護しなければならない。医療態勢を守るには、専用病床を新設するしかない。プレハブ、コンテナハウス、災害用仮設住宅など利用できるものは多い。各病室には必要な医療機器を整え、検査専用棟を配置することも可能だ。公有地に建設すれば、高額な土地取得費用も不要だ。

 建設場所を分散させず、療養者をまとめれば、効率よくマンパワーを集中でき、同時に、医療機関任せとなっている院内感染対策の負担も緩和できる。

 「2類から5類」の見直しではなく、医療現場の窮状を打開する具体的な方策が求められている。

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 感染症対策は新型コロナ≠セけに必要なのではない。新型コロナ後≠フみならず新型コロナと同時に¢シの感染症が蔓延することはあり得るからだ。

 ヒトとモノが地球規模で行き来するグローバル資本主義では、輸入感染症対策は必須のものだ。資本が多大な利益を手にするグローバル化は、一方で人の自由な移動による民衆の相互理解と国際連帯を強める。市民の安全・安心を保障するための感染症対策を市民の側から対置する必要がある。

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