2020年09月25日 1642号

【ミリタリー・ウォッチング 「終末時計」があと100秒 トランプ核軍拡にストップ】

 今年、米科学誌『原子力科学者会報』の「終末時計」(核戦争などで地球の終末が訪れる残り時間を示す)が、「あと100秒」と史上最悪を更新した。

 このような最悪の事態に至った責任は米トランプ政権にある。

 トランプは、新たな地球温暖化対策であるパリ協定、イランとの核合意などからの離脱を次々と強行し、昨年は旧ソ連と1987年に結んだ中距離核戦力(INF)全廃条約から離脱。今年5月には締約国が互いに上空から査察できる「オープンスカイズ(領空開放)」条約からの離脱方針を表明した。さらに2011年2月に発効した大陸間弾道ミサイル(ICBM)など戦略核兵器の保有数や配備数を制限する新戦略兵器削減条約(新START、期限は来年2月)をめぐる米ロ交渉でも延長(5年)しない方向で様々な「難題」を持ち出している。

 トランプ政権は「中国も入れた3か国の条約にすべきだ」などの主張で交渉を難航させているが、中国が受け入れるはずがないことを見越したものだ。新STARTは、ICBMなどの戦略核兵器の弾頭数を大幅に削減することに合意したが、現状は今年1月時点で米国が5800発、ロシアが6375発の核兵器を保有する(ストックホルム国際平和研究所)。ほとんど削減が実行されていない中、その数約320発と米ロの20分の1である中国を削減の対等の当事者とするなど到底無理だ。トランプの本当の狙いは、米国の核保有の自由を奪う条約をこの際、破棄したいというところにあるのは間違いない。

核兵器禁止条約批准を

 今年4月にニューヨークで開催予定だった核拡散防止条約(NPT)再検討会議は、新型コロナウイルス感染症の拡大で延期になった。核軍縮、不拡散の重要会議であるにもかかわらず、事前協議では、核保有国と日本政府を含む「同盟国」のサボタージュで合意事項はほとんど作れていない。

 一連の流れが、新たな核軍拡競争を生むことは必至であり、直ちにストップをかけなければならない。

 トランプの大統領再選阻止はもちろんだが、まず新STARTの5年延長に合意させることは緊急課題だ。そして、条約発効に必要な批准国数50まで残り6か国となった核兵器禁止条約の批准国をさらに広げ、いまだ被爆国の責任を果たさない日本政府を含め、核保有国とその同盟国に条約参加を求める運動を強めることが何より求められている。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会

 
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