2020年10月02日 1643号

【民主主義的社会主義への展望/MDS佐藤和義委員長 記念集会基調講演(要旨)/戦争 新自由主義とのMDS20年の闘い/グローバル資本主義にかわる社会へ】

 民主主義的社会主義運動(MDS)は結成20周年を迎えた。グローバル資本との闘いを掲げたMDSは差し迫る課題に当事者とともに草の根からの運動を作り、国際連帯を強化してきた。東京(9/19)、大阪(9/20)で開催した記念集会での佐藤和義委員長の講演要旨を掲載する(まとめは編集部、関連記事4面)。

ソ連邦崩壊の総括から

 MDSは、民主主義学生同盟(1963年結成)、現代政治研究会(70年)を経て2000年8月27日、「全世界を支配しようとしているグローバル資本主義と闘うため」(結成宣言)に結成した。我々の変革目標は民主主義的社会主義。民主主義的社会主義とは、徹底した民主主義と生産手段の真の意味での社会的所有を実現することである。

 91年12月のソビエト連邦解体をはじめ社会主義体制はなぜ崩壊したのか。ソ連邦や東欧諸国を訪問、調査した。特にドイツ民主主義的社会主義党(PDS、現左翼党)の理論家、活動家たちとの交流、討議、南アフリカ共産党との交流を通じて「社会主義世界体制の崩壊の基本的原因は非民主主義的政治制度とそれと表裏一体の統制的指令的経済制度であった」(MDS綱領)と総括した。

 ソ連邦共産党の民主集中制が政治局の決定に党員は無条件に従うことを求め官僚主義をもたらしたことを批判的に総括し、MDSは民主主義の徹底を組織原則とした。規約第5条2項に「同盟員はいかなる機関の決定であれ納得のいかない場合、反対意見を表明し、行動を留保する権利を持つ」ことを掲げた。これは方針への納得を作り出す努力をみんながするということだ。

どんな運動をつくったか

 MDSはグローバル資本主義に対しどんな闘いをつくってきたか。それはまず戦争路線との闘いだった。

 イラク反戦闘争ではイラク国内の非武装で政教分離をめざす勢力と連帯し闘った。アフガニスタン国際戦犯民衆法廷(02〜04年)、イラク国際戦犯民衆法廷(04〜05年)を担い、ブッシュ、ブレア、小泉らの戦争責任を追及した。

 日本の軍拡と闘い、戦争法反対闘争から安倍政権の改憲策動を民主主義勢力の総力で阻止した。戦争路線への対案として、無防備地域宣言運動を進め、全国29都市で署名45万筆を集めた。平和条例制定には至らなかったが、軍拡戦争路線への批判を組織することができた。

 沖縄県民の基地建設反対の闘いに連帯し運動をつくった。現地への連帯行動、県知事選挙などの支援、絶滅危惧種ジュゴン保護キャンペーン運動を展開した。

 過去の戦争責任を追及しアジア諸国の戦争被害者とともに戦後補償運動に取り組んだ。在日韓国・朝鮮人の闘いに連帯している。

 労働者の権利をはく奪し、低賃金で使うことを狙うグローバル資本との闘いは、派遣労働者の使い捨て解雇、偽装請負との闘いだった。キャノン争議は勝利、パナソニック争議は高裁勝利判決を勝ち取った。東洋印刷、岩井金属などの正社員解雇争議も闘った。派遣法廃止の立場をとった。

 最大の解雇争議となる国鉄分割民営化。国鉄労働者1047名、当事者の闘う意思に連帯し、解雇撤回闘争連帯を継続した。23年間の闘いにより勝利和解を勝ち取った。民営化の結果もたらされた05年JR福知山線脱線事故(107名死亡)では、遺族とともに事故の責任を追及した。

 福祉・介護、医療、教育などの切り捨てに自治体変革など市民とともに闘いをつくった。

 福島原発事故では、東京電力、政府だけでなく金融資本、グローバル資本の責任を追及した。MDSの医療メンバー、医療問題研究会は低線量被曝の危険性を明らかにし、原発事故被害者支援、原発再稼働阻止の運動を進めている。

 民主主義的社会主義実現の道は「長期的かつ世界的変革過程だ」(MDS綱領)との立場から国際連帯を重視してきた。

 韓国代案文化連帯をはじめ平和運動、労働運動、文化運動で日韓連帯を強め、アジア平和構築に前進している。フィリピンの運動に連帯し、イラク労働者共産党とは連帯を継続している。

 DSA(アメリカ民主主義的社会主義者)と連帯し、ともに民主主義的社会主義の展望を持って闘っている。

人類の方向を決める

 この20年はどんな時代だったのか。01年アフガニスタン戦争。03年イラク戦争。08年リーマンショック。11年福島原発事故、中東・北アフリカ民主主義革命、オキュパイ(占拠)運動。そして世界的コロナ危機。

 アフガニスタン、イラク戦争で多くの市民が殺された。「貧困徴兵制」の下で米軍兵士が死に、PTSD(心的外傷後ストレス障害)で苦しんでいる一方で、軍需資本は多くの利潤を得た。リーマンショックはグローバル資本主義の破綻(はたん)を示す金融恐慌であった。だがグローバル資本は各国政府から膨大な「救済」資金を手にしながら、労働者を大量に解雇した。

 しかし世界の民主主義勢力は対抗した。アフガニスタン・イラク戦争では、全世界の反戦運動が開戦を延期させ、開戦後には多くの占領軍を撤退させている。

 福島事故を契機として全世界の反原発運動が高揚し、多くの国が原発ゼロへの道を進みつつある。中東・北アフリカ民主主義革命に続き、11年9月アメリカでオキュパイ(占拠)運動が始まった。この運動はグローバル資本主義の支配に対し「我々が99%だ」と掲げ、1%のグローバル資本と闘うことを明確にした画期的な闘いであった。

 つまりこの20年はグローバル資本主義の戦争と新自由主義路線に対し世界の民衆、平和・民主主義勢力が反撃した20年であった。まさに人類の方向を決めようとしている時代なのだ。

どう闘っていくのか

 全世界的コロナ危機は、人類の未来は民主主義的社会主義しかないことを明らかにしている。

 公立病院を廃止縮小するのではなく維持拡大し、さらに大病院の国有化、公有化を進め、利潤に左右されない市民に必要な医療体制を作る必要がある。製薬資本が利潤のためにワクチンを作るのではなく、国有化により必要な薬剤、ワクチンを安定供給することが必要である。これはDSAのメディケア・フォー・オール(すべての人に医療を)に匹敵する民主主義的社会主義の要求である。

 安倍は追い詰められ辞任した。だが多くの市民にとって変革への展望が不明確な状況につけ込み、権力は病気辞任への同情など情報操作を駆使し、菅支持を作り出した。今こそ変革の展望を打ち出す必要がある。

 MDSは「コロナ危機を克服し社会を変える18の政策」を提起した。民主主義的社会主義への中間的目標と位置付けている。

 民主主義的社会主義実現こそ人類存続の展望であることに確信を持ち、MDSとともに進もう。



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