2020年10月02日 1643号

【コロナ在宅勤務不払い裁判 大阪市教委が帰国後自主隔離認めず出勤命令 中学教員 松田さんが提訴】

 大阪維新市政のでたらめな「コロナ対策」を暴く裁判が起こされた。9月17日、松井一郎大阪市長に対し損害賠償を求めて大阪地方裁判所に提訴したのはなかまユニオン教職員支部の中学教員、松田幹雄さんだ。

 松田さんは3月中旬、なかまユニオンのILO(国際労働機関)・ユネスコ合同専門家委員会(CEART〈セアート〉)要請団としてジュネーブを訪問。日本政府と教育委員会への追加勧告を求めるために、教育破壊と教員支配の実態を現場教員の立場で訴えた。

 帰国した3月17日は、政府の新型コロナウイルス感染症専門家会議が欧州からの帰国者に対し2週間の自宅等での待機要請を行ったその日。松田さんは管理職と話し在宅勤務(自宅研修)を求めた。校長が当初認めていたにもかかわらず大阪市教委はこれを覆して出勤を命令させ、不当に「欠勤」扱いすることで賃金カットし、人事評価を最低評価の第5区分として賞与も減額した。

 訴状では、教員の健康や感染拡大の危険を顧みず服従のみ強いる市の姿勢を問い、未払い賃金・賞与と損害賠償、計113万2498円の支払いを請求。維新市政の口だけ「感染防止」を象徴する裁判として、メディアの注目も集めている。

命令に従えばどうなるか 私の生き方は譲れない/教職員なかまユニオン・松田幹雄

 出勤指示を受けた時、最初に考えたのは「出勤していて、もし感染がわかったら誰がどう責任を取るのだろうか」ということでした。

 市教委の非常識が非難され、出勤命令を出した者の責任が問われるのは当然です。では、その命令に従った者の責任はどうか。自分の感染の可能性や周りの人に感染させる可能性を自覚しながら、電車で通勤したのは自分自身なのです。私にも責任があることは疑う余地はありません。

 次に、「命令だから仕方がない。きっと自分は感染していない」と自らを納得させ、特に体調に変化がないまま2週間が過ぎれば何も問題はなかったといえるのか、ということです。電車での出勤は本当はとるべきでない間違った行動と思いつつ、命令に背く不利益を避けることを優先する行動になります。

 私は、生徒たちに、社会の支配的な「常識」=「金・地位・能力での人の評価」にとらわれない自分自身の価値観・行動の指針をつくりあげてほしい、と思い伝えてきました。「保身を優先して出勤命令に従うことは、大切にしたいと思ってきた生徒との向き合い方の基本を壊すことになる。出勤命令はパワハラだ」と考えました。

維新の教育支配を問う

 森友関係の文書改ざんを強要されて自死に追い込まれた赤木俊夫さんに象徴されるように、理不尽な意に沿わない仕事を強要される公務員は至る所に存在します。最初はおかしいと思って不本意ながら従っていた命令も、それに手を染めていくうちに違和感を感じなくなり、今度は自分がそれを命令・指示する側に回っていく…。それが教員も含めた今の公務員職場の大方の現実ではないでしょうか。私は、それに抵抗し声を上げることができるなかまに恵まれたため、提訴することができました。

 提訴は、テレビ、新聞にも広く報じられました。私の主張が受け入れられるという手応えを感じています。

 コロナ禍で求められるものを一切考慮せず、10年前の「研修場所として自宅は原則認めない」との立場をごり押しした市教委の服務・監察グループ、私の不適切な勤怠の扱いがコロナ感染拡大につながるとの直訴状を黙殺した危機管理室など。このような状況をつくり出している原因の根本は維新府・市政にあります。

 私たちがCEARTに何を訴えに行ったのかも含めて明らかにし、維新の教育支配を問う裁判に発展させたいと思っています。ご支援よろしくお願いします。



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