2020年10月09日 1644号

【女性閣僚2人だけの最悪内閣/ジェンダー平等の視点ゼロ】

 ついに安倍政権は倒れた。「女性の活躍」を叫んでいた安倍首相。働く女性は増えたものの、非正規労働者の割合が2010年の51・7%から19年54・2%へとさらに増加した。コロナ危機で真っ先に仕事を失ったのがこの非正規の女性労働者たちだ。働く女性を支援するためとした「保育の受け皿拡大―待機児童ゼロ」の目標は達成されず、安心して働き続けられる状況からはほど遠い。

 「指導的な立場に就く女性」の割合を20年までに30%にする目標はすでに断念、日本のジェンダーギャップ(男女の格差)指数は世界121位に低下した。「女性の活躍」とはかけ離れた7年8か月だった。

 菅新政権はどうか。ジェンダー政策について期待できるものはない。閣僚中の女性はわずか2人。割合は1割に減った。しかもその2人はジェンダー平等を否定するような思想の持ち主で、安倍政権の閣僚だった。

 上川陽子法務大臣は前の法相の時、16人の死刑を執行した。歴代最多だ。18年7月、自らが命令したオウム死刑囚7人の執行前夜、しかも西日本が記録的な集中豪雨に襲われていた最中に「赤坂自民亭」の「女将(おかみ)」として宴会を饗した無神経ぶりが批判された。命を軽んずる典型的法相だった。選択的夫婦別姓制度導入を拒み、自民党憲法改正推進本部副本部長である改憲論者だ。

 橋本聖子五輪・男女共同参画担当大臣。男子スケート選手へのセクハラ報道の人物が男女共同参画?≠ニ揶揄(やゆ)されたことは記憶に新しい。五輪では、日本軍国主義の象徴「旭日旗」も認めようという改憲派でもある。

 戦争・新自由主義を進める菅首相の手足になって働く女性だけをわずかに入閣させたにすぎない。

 政権発足直後の9月25日、今度は自民党杉田水脈(みお)衆院議員が性暴力被害者の相談事業に関して「女性はいくらでもウソをつけますから」と性暴力根絶の運動を貶(おとし)める女性蔑視発言まで飛び出した。自民党にはジェンダー政策実現の観点はない。

野党共闘の政策へ

 コロナ禍で深刻な状況に陥っている非正規女性労働者やシングルマザーの支援は緊急課題。選択的夫婦別姓制度導入への民法の改正、性犯罪を罰する刑法の改正、セクシュアルハラスメント禁止条約の批准などの課題も山積みのままだ。

 実現に向けた運動を強めるとともに、各政策決定の場でジェンダーの視点で発言できる女性議員を増やさなければならない。市民と野党の共闘に向けた政策にも、ジェンダー平等を盛り込んでいく必要がある。

(OPEN<平和と平等を拓く女たちの絆>・山本よし子)

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