2020年10月16日 1645号

【大阪「都構想」の仕掛人たち/菅、竹中、維新で民営化へ突進/弱者を足蹴りにする「成長戦略」】

 「大阪都構想」2度目の住民投票は10月12日告示、11月1日投開票と決まった。5年前との違いは「自主投票」だった公明党が賛成に回ったことだ。そして公明党の根回しなど都構想を後押ししてきた菅義偉(よしひで)が首相に就いたことだ。都構想に反対する地元自民党よりも維新を大事にする菅の思惑は一体何なのか。

維新政治の産みの親

 「二重行政を解消するのは当然だ」と菅は前回の住民投票から一貫して「都構想」に賛意を示している。地元大阪の自民党は府議会、市議会とも一貫して反対。しかし菅は党総裁になっても立場を変えていない。

 安倍晋三が総裁の時も「全面的にバックアップする」と発言したが、それは改憲賛同との引き換えだった。菅が維新に肩入れするのは、ともに新自由主義の信奉者であることに尽きる。

 「大阪都構想」は大阪知事(当時)であった橋下徹が言い出したものだが、そもそもテレビタレントだった橋下を政界入りさせたのが2007年当時、自民党選対副委員長の菅だった。

 08年1月、大阪府知事に当選した橋下は「大阪都構想実現」を掲げ地域政党「大阪維新の会」を立ち上げる。菅はノンフィクション作家森功のインタビューに答え「橋下徹と松井一郎という政治家は、捨て身で政治を行っていますから、二人を信頼しています」と答えている(『総理の影 菅義偉の正体』小学館)。

 菅は、大阪市は横浜市に比べ人口で百万人少ないのに職員は1万5千人も多いとけしかけた。「橋下に大阪市や大阪府の職員削減政策を授けたのが菅である」(同書)。それ以来、菅と維新の親密な関係は続いている。

 ちなみに、橋下らが国政進出のためにつくった「日本維新の会」の立候補者選定委員長は竹中平蔵だった。維新の政策が民営化など新自由主義に貫かれていることも納得がいく。大阪市は住民票の交付などの窓口業務を民間委託してる。その大半を竹中が会長職にある(株)パソナ及び関連会社が受託している。

「地方を大切に」?

 菅の自治体政策とはどんなものか。秋田出身を「売り」にする菅は、二言目には「すべての地方を大切にしたい」と語る。県民の意志を踏みにじり基地建設を進める菅は「その地方に沖縄は入っているのか」と聞かれ、ムキになって「当然入っている」と語ったように、菅が大切にする地方とは地方自治の尊重ではない。

 では、何を大切にするのか。菅は「何よりうれしかったのは、地方の地価が27年ぶりに上昇したこと」を上げる。だぶついた資金がインバウンドを当てこんで不動産投資に向かった。菅の地方政策の行き着く先は、自治体が競って乱開発を呼び込んだかつての「列島改造」とさほど変わらない。

 その先導役が維新の「大阪都構想」だということだ。公共施設の民営化を一気に進め、カジノ、万博、国際金融都市など広域開発投資を誘導する維新を支持する以外に、地域間競争を煽る菅の選択肢はない。

小泉顔負け 格差拡大

 大阪を「都」にしようとする維新の先を行くのが、「東京23区を米国ワシントンのように政府の直轄地に」(「ポストコロナの『日本改造計画』」PHP研究所)と主張する竹中だ。

 竹中は、一極集中による圧倒的な財源を持つ東京を他の自治体と同列で扱うことがおかしいという。そして、「東京都の資産を売却せよ」と本題に続ける。東京メトロ、東京国際フォーラム、東京ビッグサイトなどの都の所有する株を放出せよという。売れる土地も多い。運営権だけでも売れと言いた放題だ。

 すでに竹中が社外取締役につくオリックスは関西国際空港の運営権をフランス資本と共同で手に入れている。パートナー維新の影響力がある大阪ではすでに「成果」を上げている。しかもだ。大阪カジノに応募した唯一の企業が日本MGMリゾートとオリックスの共同体だった。腐れ縁は切れることはない。

 菅と竹中のコンビが「復活」したことで、菅政権は小泉政権とそっくりだと言われている。小泉政権の民営化、規制緩和政策は「勝ち組、負け組、自己責任」を吹聴し、格差社会を作り出した。今回、新たに実行部隊としての維新が加わった。ますます、競争格差社会を深化させるに違いない。彼らの好き勝手にさせてはない。



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