2020年10月16日 1645号

【ドクター コロナワクチン開発の危うさ】

 9月8日、なんと、新型コロナウイルスワクチン開発中の世界の製薬会社トップ9人が「十分な試験データが入手可能になるまで新型コロナワクチンの承認申請をしない」と声明しました。彼らは薬剤の認可を早くすることばかり要求していた人たちです。それがこんな声明を出すほど、トランプや世界の政治家の開発への無茶な圧力がかかっているものと思われます。

 コロナワクチンで失敗すれば、市民の間でワクチン全体への不信も強まり、売り上げが減れば大変というわけです。ファイザー社の肺炎球菌ワクチンだけで世界で5800億円もの収益を上げています。声明は、ワクチンの害作用が出た際の責任逃れかも知れません。いずれにしても、彼らはその開発の状況を最もよく知っている人たちですから、コロナワクチンがまともな研究データなしに、効果なく危険でも認可されそうなことを示しています。

 その翌9日、開発のトップを走っていたイギリスのアストラゼネカ製ワクチンの臨床実験で深刻な害作用が発生し、世界的に実験が一時中断しました。科学雑誌『Nature』によれば、事件を社外で最初に報告されたのは同社へのごく一部の投資家。一方、同社は事故後の実験再開時にも実験の詳細は一般に公表しないとのことです。このワクチンは世界の人びとの出費で購入されるのであり、すべてのデータ公表は義務です。

 イギリス医師会雑誌は、前例のないスピードの世界的ワクチン開発レースに対して、WHO(世界保健機関)ワーキンググループメンバーの「良いことよりも害を与える可能性がある」との警告を伝えています。

 大問題となったデング熱ワクチンは、フィリピンで85万人に接種し多くの犠牲者を出しました。このワクチンは本当のデング熱にかかった時、症状を悪化させたのです。コロナワクチンでも米FDA(食品医薬品局)などはこの問題を一番に取り上げ、対策を製薬企業に迫っています。しかし、日本政府は、害作用は市販後に調査をすればよいとしています。開発規制が最もゆるいのが日本です。

 コロナワクチンの開発は、動物実験を大変簡略化している、効果の評価は症状によらず単なる検査成績である、安全性評価が拙速にされデータが隠蔽されているなど極めてずさんなものです。また、企業と研究者の癒着にも注意が必要です。

(筆者は小児科医)
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