2020年10月23日 1646号

【ミリタリーウオッチング/大軍拡5.5兆円の概算要求/宇宙軍、電子戦、イージス「代替」】

 財務省は10月7日、2021年度概算要求の集計を公表した。要求総額は105兆円超で過去最大。菅政権の下で初めてとなる防衛省の概算要求は5兆4898億円(20年度当初予算比3・3%増)で、これも過去最大だ。加えて額未定で項目だけを示す「事項要求」も多く、実際の要求総額はさらに増える。「膨らむ防衛予算 コロナ下の聖域許されぬ」(10/5毎日社説)などと新聞各紙が批判するほどだ。

 2021年度における防衛省の新たな狙いは、「宇宙・サイバー・電磁波の領域における能力の獲得・強化」だ。新規に要求された額を見てみよう。

 まず「宇宙関連」が724億円。5月に航空自衛隊の宇宙作戦隊が発足したが、指揮統制を担う宇宙作戦群(仮称)も新設する。別に宇宙関連の弾道ミサイル経費が513億円。「サイバー関連」は357億円で、約540名の自衛隊サイバー防衛隊(仮称)を編成する計画だ。レーダーやミサイル誘導など「電磁波領域」では、敵レーダー等を無力化するためのスタンド・オフ(圏外から攻撃を可能とする)電子戦機開発に153億円。また敵の電子妨害に対抗することを口実に、電子防護能力に優れたF35Aを4機402億円と短距離離陸・垂直着陸が可能なF35Bを2機264億円で取得。その整備用機材経費697億円。列挙しただけで5千億円近くに及ぶ。

 これまで「国是」としてきたはずの「専守防衛」など完全に吹っ飛んで、正真正銘の攻撃力増強。焦点の先制攻撃も可能となる。


代替は平和外交

 今年6月、イージス・アショア配備が撤回となったが、政府・自民党は間髪をいれずイージスの「代替策」と称して「敵基地攻撃能力の保有」を持ち出し、中国・朝鮮を敵と想定した軍事力行使を可能にしようと動き出した。

 一方、政府は9月24日、イージスを「移動式の洋上プラットフォーム」に搭載する「洋上3案」(石油掘削装置型、商船型、護衛艦型)を示した。今回の概算要求では、この洋上イージスは米軍再編関係経費とともに項目だけの「事項要求」としている。さらに巨額となる軍事費を少なく見せようとする意図が働いている。

 そもそもイージス・アショア配備撤回は住民の強固な反対があったからだ。不安は、ブースター落下だけでなく、施設そのものが攻撃されるからだった。違う武力を持ち込んできて、代替策になるのか。否である。真の意味で代替策があるとすれば、それは平和的な外交以外にない。今、そのことにこそ力を注ぐべきだ。

藤田なぎ
平和と生活をむすぶ会
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