2020年10月30日 1647号

【「足立区滅ぶ」発言 自民区議へ抗議殺到/時代錯誤の差別意識丸出し】

 「LだってGだって法律で守られているという話になったのでは、足立区は滅んでしまう」。東京都足立区議会の自民党最長老、白石正輝議員によるLGBT(注)など性的マイノリティーへの差別発言に全国から抗議が殺到している。10月20日の本会議で本人から謝罪と発言の撤回がされたが、解決とはほど遠い。

少子化問題と結ぶ誤り

 「レズとゲイが完全に広がると(中略)子どもが一人も生まれない」「普通の結婚をして普通に子どもを産んで、普通に子どもを育てることがいかに人間にとって大切か」。白石議員の発言動画がツイッターで拡散され大炎上した。さらに油を注いだのがマスコミへの本人の釈明だ。「(LGBTを)法律的に擁護しなきゃいけないということではない(略)民法の中に想定されていない生き方。一般的でない生き方を特別に擁護する必要ない」と、差別発言を垂れ流し続けた。

 区へは450件を超える抗議電話等が殺到し、LGBT当事者が開始した抗議署名は短期間に約3万3千筆が集まった。

 性的マイノリティーの人権を守る取り組みと少子化対策を結びつけること自体大きな誤りで、自民党性的指向・性自認に関する特命委員会ですら「少子化と同性婚制度に相関関係は見当たらない」と指摘する。

「命にかかわること」

 足立区在住の当事者は「(発言は)子どもたちに深く刺さる。『自分はここにいてはいけないかもしれない。いなくなろう』と命にかかわることにもなりかねない」と、存在を否定される苦しさを語る。性的マイノリティー当事者が「自殺をしたい」と思ったことのある割合は、非当事者の6倍との研究報告もある。

 「趣味だと言われたが、10代のころ何度も治せないか悩んだ。けれどこれは病気や趣味ではなく、動かすことのできない特性です」。LGBTQカップルの子育て支援に取り組む当事者からは「すでに(カップルの)子どもたちはいるんだ」と、これまで語らないようにしてきたことを語っていく決意が述べられている。

 災い転じて福となす=\白石発言は、性的マイノリティー施策を前に推し進める契機となりつつある。早速、11月にも当事者と区長との意見交換会が持たれることが決まった。

 形式的な謝罪では問題は解決しない。区政と議会が、今後どのように性的少数者の人権を守る制度を作り上げられるかが問われている。

(注)レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの頭文字による性的マイノリティー総称の一つ。Q(クエスチョニング)や+を加える場合もある。

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