2020年10月30日 1647号

【読書室/消費税増税と社会保障改革 伊藤周平著 ちくま新書 本体1100円+税/コロナ禍での医療緊急提言も】

 著者は、本書の目的を「消費税に依存しない社会保障充実の道筋を示す」としている。

 そもそも消費税は、導入当初から「社会保障の主要な財源」として位置づけられ、「社会保障の充実のため」と称して税率の引き上げが行われてきた。一方で、社会保障費はその増大が国の財政を圧迫しているとして抑制されてきた。

 本来、社会保障費は、消費税のみならず法人税や所得税など国の歳入全体を財源としてまかなわなければならないはず。ところが、消費税と限定することで、法人税や所得税は社会保障費の財源から切り離され、減税が繰り返されてきた。

 消費税の増税分は、法人税減税などによる直接税の減収分とほぼ同額。つまり、富裕層や企業の利益のために、逆進性の高い不平等税である消費税を増税しているのである。しかも、消費増税の負担は中小事業者に重く、大企業は輸出時における消費税の還付金をより多く受け取っている。

 本書では、消費税のこうした問題点を指摘するとともに、年金、医療、介護等の社会保障制度がいかに改悪されてきたかを明らかにし、改革を提案している。

 とりわけ、医療予算の抑制を理由に進められてきた病院の統廃合、医師・看護師の削減政策が、コロナウイルス禍で医療崩壊の危機を作り出していることを指摘し、緊急提言を出している。(1)PCR検査センターの全国設置を公費で行う(2)医療用マスク、消毒液、防護服などを公費で確保する(3)保健所の人員増、医療機関への人的物的支援を国の責任で行い、療養費を全額公費で負担する――私たちが今、自治体・政府に要求すべき内容だ。  (N)
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