2020年11月06日 1648号

【政府の新型コロナパッケージ/市民の安全そっちのけ 経済再開を最優先】

 政府の新型コロナウイルス感染症対策本部の「新型コロナウイルス感染症に関する今後の取組」(以下、「取組」)は、人の命、安全より経済を優先する。

経済再開に診療所組込み

 グローバルな企業活動には、医療機関の負担もお構いなし。「ビジネス目的の出国者が市中の医療機関において検査証明を迅速に取得することを支援する」という。「ビジネス目的」なら、「市中の医療機関」ではなく産業医が担うか、事業主が検査機関と自ら契約し実施すべきものだ。

 新型コロナの2類感染症から5類への格下げ≠ノ向けた理由を「医療機関の負担減」としながら、グローバル企業の事業活動のために、市中の医療機関利用を促進する。負担軽減を口にする一方で、地域医療機関に負荷をかけるのでは、理屈に合わない。

薬は経済優先・政治主導

 治療薬は「開発中の薬剤について治験手続きを簡素化するとともに、今後、薬事申請がなされた場合は最優先で審査を行い、有効性等が確認されれば速やかに承認する」としている。

 一般に薬の承認申請は1年程度の審査期間を要する。だが抜け道として海外での承認などを条件にした「特例承認」制度がある。その乱発が懸念される。

 厚生労働省は、レムデシビルを新型コロナ治療薬としてわずか4日間の審査で承認した。重症者限定とされるが「取組」はその点に触れず、「レムデシビル、デキサメタゾンといった医薬品が現在は治療薬として標準的に活用されるようになった」と病状に関わらず使用でき、さも治るかのような扱いだ。ところが10月15日、世界保健機関(WHO)は各国の臨床試験の結果、そのレムデシビルに効果がなかったと発表した。

ワクチン開発競争煽る

 ワクチンは、もっとひどい。「ワクチンの使用による健康被害に係る損害を賠償すること等により生じた製造販売業者等の損失を国が補償する」という。ワクチンは現在193種類が開発中(10/2WHO)。各国政府が「戦略物資」として位置づけ、欧米のワクチンメーカー9社が「拙速な承認申請はしない」との共同声明を出すほどの開発圧力をかけている。日本でも塩野義製薬、第一三共、田辺製薬などが参入している。大阪のワクチン開発には維新首長が治験スケジュールに口をはさみ「大阪府市一体の都構想の優位性」捏造(ねつぞう)とやってる感♂縁oのために政治利用する始末だ。

 そのワクチンに健康被害の損失補償を政府が引き受けるのだから、「拙速な承認申請」に誘導する結果となるのは明らかだ。

 安倍を引き継いだ菅政権のコロナ対策は、経済最優先だ。放置すれば、市民の生活と安全は守れない。

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