2020年11月06日 1648号

【菅政権 マイナンバー強要とデジタル庁設置 市民丸ごと支配許さない】

 菅政権の看板政策は、「デジタル庁」設置・デジタル化推進だ。10月26日臨時国会の首相所信表明でも強く打ち出した。だが、マイナンバーカード取得と活用などを柱とするこのデジタル化は、個人情報保護など市民の権利を「規制」として敵視するもので、監視社会と市民丸ごと支配につながる危険な政策だ。

グローバル資本の戦略

 菅政権は、現在、人口の2割にとどまるマイナンバーカードを22年度末までに全住民に交付し、自治体行政システムを25年度末までに統一する目標を掲げる。この方針は、社会全体のデジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル技術による業務やビジネスの変革)を推進する「骨太方針2020」で示されている。この政策を一挙的に進めるために、各省庁に対する指揮命令権をもつ「デジタル庁」を設置する。

 政府のIT総合戦略や骨太方針のデジタル化政策は、グローバル資本を代表する経団連の戦略だ。経団連はかねてより、国家戦略としてDXを推進させ国際競争力強化を図ることを政府に提言してきた。今回の「デジタル庁」創設についても、「行政のDXが喫緊の課題」とし「司令塔と実行組織の設置」を緊急提言している。菅政権の進めるデジタル化政策は、市民生活の向上とは全く無縁なのだ。

スーパーシティで支配

 菅政権のデジタル化政策の柱は、マイナンバー取得・活用促進と行政のデジタル化を機能させるスーパーシティ実現だ。

 菅首相は「カードの普及促進を一気呵成(かせい)に進め、スマートフォンによる行政手続きのオンライン化を行う」(9/23デジタル改革関係閣僚会議)とぶち上げた。行政のデジタル化を進める重要な手段としてマイナンバーカードを位置づけ、健康保険証や運転免許証、国税、年金などへのひも付けをめざす。来年3月には健康保険証として利用が開始され、10月には医療機関での服薬履歴の閲覧を開始。23年度ごろに介護保険被保険者証として利用開始を予定する。

 他に運転免許証などのデジタル化とカードのスマホ搭載、在留カードとの一体化を検討している。全住民のカード所持強制をめざすマイナンバー制度は、すべての行政のデジタル化の基盤となり、同時に国家による個人情報の一元管理に道をひらく。


自治体運営まで民営化

 骨太方針で早期実現をめざす「丸ごと未来都市」スーパーシティ構想は、データの共有と相互利用を基本に、あらゆるものをネットでつなげる行政のデジタル化を機能させるものといえる。それには、行政システムの統一・標準化と行政や民間の持つ様々な個人情報の集積が不可欠だ。行政システムの統一・標準化は、法律に明記された必要最低限の住民サービス以外は切り捨て、大企業の自治体業務への参入を促す。すでに政府は住民基本台帳のほか、地方税や年金、保険、児童手当、生活保護など17業務について、自治体に標準システムの導入を義務づける法案を来年の通常国会に提出する準備をしている。

 一方、スーパーシティ事業の核であるデータ集積については、国家戦略特区法で企業が参入する「推進機関」へ国や自治体のデータ提供義務が盛り込まれている。その実現のため、個人情報保護法や同条例が「官民や官同士での円滑なデータ流通の妨げとなっている」(第32次地方制度調査会答申)として個人情報保護の緩和を提言。法に保障されたプライバシー権を侵害しようとしている。

 菅政権のデジタル化政策は、政府による監視社会と自治体運営自体の民営化に道をひらき、市民丸ごと支配につながる危険性がきわめて高いのだ。

地域から闘いを強める

 マイナンバー強要反対もスーパーシティ反対も、闘いの現場は自治体だ。スーパーシティのアイデア公募には54自治体が応募。大阪の維新府・市政は、空飛ぶ車やドローンなどを活用した「未来の街」を夢洲(ゆめしま)―万博跡地に2030年完成をめざす提案をした。そこは隅々に至る徹底した監視社会となる危険性がある。マイナンバー強要を許さず、個人情報保護法制を強化し、資本の利益のためのデジタル化に反対する闘いをつくり出そう。
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