2020年11月06日 1648号

【未来への責任(309) 過去清算共同行動が外務省に要請】

 9月30日、外務省幹部は、差し押さえられた日本企業の資産に関して現金化しないとの韓国政府の確約がなければ、菅首相は年内に開催が予定されている日中韓首脳会談に出席しない、との認識を示した(9/30共同)。

 日韓シャトル外交が途絶えて久しい。2018年10月大法院判決以来、単独で日韓首脳会談を持つことはできなくなっている。それ故、多国間会議で日韓首脳が会い、意見交換の機会を持つことは意義がある。昨年12月、中国・成都での日中韓首脳会談開催の際には、安倍前首相と文大統領が会談。強制動員問題については話し合いで解決していくことだけは確認した。以降、細々とではあるが日韓の外務省レベルでの協議は続けられている。

 ところが菅首相はその貴重な機会すら否定するかのような意向を示した。

 こうした中で「強制動員問題解決と過去清算のための共同行動」は10月13日、外務省へ要請を行った。主要な要請事項は(1)差し押え資産の「現金化」を未然に止めるため、問題解決案を見出すための日韓の外交協議を促進すること(2)同種事案の和解解決事例などに学び、当事者間で話し合い、解決案を見出していくよう促すこと―だ。

 要請に外務省北東アジア第一課の担当者は次のように回答した。

(1)9月24日に電話で日韓首脳会談を行った。首脳間では、事態を放置してはいけない、現金化は深刻な影響を及ぼす、の2点の認識を共有した。日本側としては、悪化した事態を元に戻さねばならないとは思っているが、それは先ず韓国がやるべき。首脳会談を実施するには環境づくりが必要。時間はかかるかも知れないが首脳レベルが会えるよう努力していく。

(2)西松建設訴訟の和解など過去の和解事例については承知している。しかし、日中と日韓とでは戦後処理の仕方が異なり、労務動員のやり方も違う。このことを踏まえて対応していく。ただ、現時点で、企業側から和解協議に応ずるという話は聞いていない。

 外務省の回答で「首脳レベルが会えるよう努力していく」という姿勢を維持していることはうかがえた。過去清算共同行動から、「企業の経済的利益を守る」ことは外せないと言うが、問題を解決することこそが企業利益に叶(かな)うのではと指摘。また、日中と日韓とでは異なると言うが、同じ現場で同じような労働をしていて解決が違うのは納得を得られないとも伝えた。これに対しては明確な反論はなかった。

 双方の隔たりはまだ大きい。しかし、話し合うことに意義がある。今後も要請を継続していく。

(強制連行・企業責任追及裁判全国ネットワーク 矢野秀喜)

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