2020年11月06日 1648号

【コラム見・聞・感/重要提言を発した学術会議/「不要」なのは自公政権だ】

 菅政権発足早々、日本学術会議新会員候補6人の任命拒否問題で、学術会議に対する不要論などの攻撃が広がっている。政府への勧告を10年以上も行わない「休眠組織」は要らないとの主張だ。

 だが学術会議内部の委員会、分科会からの「提言」は毎年のように行われており、きわめて有意義なものもある。

 「高レベル放射性廃棄物の処分について」(2012年提言)はその一つだ。政府が推進する核のごみの「地層処分」(地下に埋設)について、埋めた後に地盤が動いて放射性物質が漏出しても再取り出しができず無責任と批判。地上での「暫定保管」に管理方法を切り替え、安全確実な処分技術の確立を待つよう提言した。暫定保管のためには核のごみの総量を確定させる必要があるとして、核のごみ増加につながる原発再稼働に反対を表明、注目された。

 14年に出された「東京電力福島第一原子力発電所事故による長期避難者の暮らしと住まいの再建に関する提言」(福島復興支援分科会)も同じだ。「原子力災害による放射線被曝は、長期的に健康被害をもたらさないように、できる限り避けなければならない。一方で、避難生活に関わる帰還、移住、避難継続の選択については、誰からも強要されることなく、避難者個人の判断を尊重する必要がある」として「帰還を当面選択しない住民も公平な取り扱いをすること」「長期避難者の住民としての市民的権利を保障すること」を求めている。

 私たちが要求してきたのと同じ方向性だ。背景には、原発事故前から一貫して弱者に寄り添ってきた丹波史紀(福島大学)らの尽力がある。

 12年の核のごみに関する提言は、内閣府原子力委員会からの諮問に対する答申として出された。当時の原子力委員長・近藤駿介は提言も自らの手で受け取っている。驚くことに近藤は今、提言が否定したはずの地層処分を推進するNUMO(原子力発電環境整備機構)理事長として北海道寿都(すっつ)町、神恵内(かもえない)村での受け入れ工作活動を続ける。自ら諮問しておきながら不都合な提言が出ると無視。核のごみ拒否条例まで作って「要らない宣言」をしている北海道に民意無視で強要する。

 14年の提言も無視し政府は棄民を続けた。廃止しなければならないのは学術会議ではなく自公政権だ。

(水樹平和)
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