2020年11月06日 1648号

【避難者の住まいを奪わないで/国・福島県の棄民政策許さない】

 福島県は3月25日、東京・江東区の国家公務員宿舎に居住する区域外避難者4世帯に住居の明け渡しと損害賠償金を請求する裁判を福島地方裁判所に起こした。県が県外避難者を訴えたのは全国初だ。原発事故で過酷な境遇を強いられた被害者に対しては、福島県こそが寄り添い安心して暮らせる住宅を確保すべきだが、国と一体で棄民政策を進める象徴的な事件だ。

 「国際法にも国内法にも反する人権侵害」「原発事故に対する住宅政策確立は遠ざかる」「当事者を支えよう」と9月、「避難者の住宅追い出しを許さない会」が結成された。

 10月中旬、福島地裁からの第1回弁論呼び出しに当事者は抗議。現在、代理人弁護士が東京地裁への「移送申立て」を行い、弁論は延期されている。国公宿舎の所有者は福島県ではなく財務省で、当事者も東京在住だからだ。県は「高額な旅費がかかるわけではない」として、福島まで出てこいと嫌がらせ。避難当事者を経済的・精神的に追い込み、意見陳述の機会すら奪う不当な対応だ。

 「許さない会」は、コロナ禍を意識しホームページを立ち上げ、行動提起や経過報告、カンパ要請を行う。11月には、国公宿舎の家主である財務省と交渉、国主体の解決を要請する。当事者は公的住宅入居を希望しており、国土交通省と東京都に都営住宅の確保に向けた協議を要請する。

 追い出し提訴は、難民条約・国内避難民に関する指導原則や住生活基本法、子ども被災者支援法に反する。人権侵害として講演会、学習会で広く訴えていく。当事者は「一方的な提訴は納得できない」「都営住宅に12回落選した。せめて当選するまでは」と語っている。

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