2020年11月13日 1649号

【学術会議任命拒否/批判・異論許さぬ菅】

 新自由主義政策推進、「国策」の障害となる批判・異論の存在を菅政権は許さない。日本学術会議任命拒否はその典型だ。

 戦争法・共謀罪・秘密法に反対した学者が拒否されたことが象徴している。学問の自由の破壊であることは間違いない。

研究の軽重も利潤で

 加えて見逃してはならない点がある。それは、今回標的とされた人文・社会科学への一貫した冷遇攻撃だ。

 例えば、政府の競争的研究費制度(省庁等が設定したテーマに応募させ、研究経費を配分する制度)。2020年度は約7千億円、130件にのぼるが、理学・工学・先端医学―いわゆる自然科学関係が圧倒的で、人文・社会科学関係は数件に過ぎない。

 理学・工学・先端医学系の研究分野はカネを生みやすい。現在のグローバル資本主義・新自由主義政府が好む成長戦略=技術革新に直接つながるからだ。

 人文・社会科学の研究は、過去から現在に至る政治・経済・社会・歴史・文化を見極め、社会のありよう、人のあるべき姿・価値観・真理を探究する。その際、重視されるのが批判的精神だ。批判精神こそが現状を全面肯定せず、社会の進歩への道を指し示し、変革への原動力となる。

すべての市民の課題

 今回、任命拒否された学者6人は、その学問的立場から導かれる当然の論理に基づき違法、違憲、不当性を指摘した。安倍・菅・維新からトランプに至るまで、法や人権・人道を基礎とした社会正義に反しようと持論をゴリ押しする権力者にとって、こうした学者からの論理的・客観的批判にさらされることは耐え難く、それが世論に浸透することを恐れる。だから、財政的にも抑圧し、批判そのものを封じようとする。

 「学問の自由の侵害」というと一見限られた分野での出来事のように見られてしまうがそうではない。平和と民主主義に貫かれた社会を目指して現在を生き、未来を切り開こうとする市民すべての課題だ。
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