2020年11月13日 1649号

【北海道寿都町、神恵内村 核のゴミ最終処分候補に応募/住民投票条例制定を直接請求】

 北海道寿都(すっつ)町に続き、神恵内(かもえない)村でも高レベル放射性廃棄物最終処分場候補地への応募の動きが出た。両町村が10年以上前から、国や廃棄物の地層処分(埋め立て)を推進するNUMO(原子力発電環境整備機構)との懇談や勉強会を水面下で続けてきたことも明らかになった。

 両町村は10月上旬、相次いで応募に踏み切った。神恵内村では商工会が村議会に出した推進請願の採択だけで応募に踏み切る民主主義無視の無法ぶりだ。

 一方、寿都町の片岡春雄町長は「内心では大半の住民が応募に賛成であることは『肌感覚』でわかる」などと暴言を繰り返した。反対派住民が「そんなに自信があるなら堂々と住民投票をすればいい」と求めたが、町長は否定し続ける。2001年から20年近く町政に君臨し、05年以降は無投票のため選挙の審判も受けないままの片岡町長に「暴君」など批判は強まる一方だ。

 10月1日、伴英幸・原子力資料情報室共同代表を招いた札幌市内の集会では「核のごみ受入拒否を宣言した道条例(00年制定)を盾に、廃棄物を絶対に入れさせない闘いを作ろう。20年でも30年でも闘う。寿都、神恵内を第2の幌延(ほろのべ)にしよう」との決意が示された。

 幌延町で日本原子力研究開発機構深地層センターの誘致が持ち上がった際、すぐ隣の豊富(とよとみ)町では町議会議長、特別委員会委員長が誘致決議を強行採決。反対派住民らが2人に狙いを定めてリコール運動を展開した。1990年、リコールが成立し2人は失職。推進派に大きな打撃を与えたことが、今日まで核のごみを持ち込ませない闘いを作り出した。

急拡大する反対運動

 寿都町では、地元漁協が始めた反対署名が1か月で700筆も集まった。町人口(2893人)の4分の1にあたる。町長の応募表明後、反対派住民が立ち上げた「子どもたちに核のゴミのない寿都を! 町民の会」による住民投票条例制定のための直接請求署名は、法定数(有権者の50分の1以上、58人)の3・5倍に当たる217人分を集約。住民の会は10月23日、直接請求を行った。

 一般の署名と異なり、生年月日を記載、捺印まで求められ、署名簿は役場で縦覧される。ハードルの高い署名が、住民運動もなかった町で一気に集まったことは、核のごみ最終処分地への応募表明、そして「片岡独裁」への町民の怒りの大きさを物語る。

 「町民の会」は、住民投票条例が不成立に終わった場合、片岡町長のリコールに向けた直接請求運動も視野に入れる。町の独裁者に果敢にノーを突きつけた住民。核のごみ最終処分地応募という暴風が吹き荒れる寿都には、同時に民主主義の風も吹き始めた。

 
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