2020年11月13日 1649号

【沖縄 防衛相会談で新基地断念求める/「遺骨」を基地埋め立てに/「戦没者を冒涜(ぼうとく)」と批判】

自民17県議がクラスター

 6月沖縄県議選で当選した自民党会派の県議19人の内18人が10月18日から4日間、先島(宮古・八重山地域)を視察した。県議らは与那国島から石垣島、宮古島の自衛隊新駐屯地工事の進捗状況見学も兼ねてバスで各地を回った。その中には、辺野古新基地建設工事を推進し稲嶺進前名護市長の三選阻止に暗躍した名護市選出の県議や、普天間基地の危険性除去を理由に辺野古移設を公然と求めた宜野湾市選出県議もいた。

 与那国町、石垣市、宮古島市の首長や議員らと4日間連夜の懇親会が開催された。新基地建設をすすめ南西諸島への自衛隊ミサイル部隊を積極的に受け入れた県議らはどんな話で宴席を過ごしたのだろうか。



 帰任後18人中、17人が新型コロナウイルスに感染したことが判明。県は10月23日、自民県議団の視察行動をクラスタ―と認定した。誰もがありうる感染自体は非難すべきではない。だが、10月に入り沖縄県は10万人当たり新規感染者が東京を超えて全国最多となり、コロナ感染注意報を出したばかり。とりわけ宮古・八重山地域は感染増加傾向で県は16日、両地域の病床確保「医療フェーズ」を最高の5に上げていた。その最中、全国でも初めての視察クラスター≠セ。地元紙が「緊張感がない」「危機管理の甘さ」と厳しく批判するのは当然だろう。

 22日決算特別委員会はその県議らが欠席、23日、玉城デニー県知事と論戦予定だった総括質疑も取りやめとなった。自民党本部は「手痛い失敗」と言うが、コロナ感染、基地建設という県民の命にかかわる問題への自民党の基本姿勢こそが問われている。

「辺野古唯一」繰り返す

 玉城知事は10月22日、県庁で岸信夫防衛相と会談した。辺野古新基地建設断念や新たな政府との協議の場の設置などを次々と提案し迫ったが、10日に訪沖した加藤勝信官房長官同様、岸防衛相も「辺野古が唯一」と繰り返しただけだった。

 発言原稿を棒読みする岸に対し、しっかりと話す知事の姿は対照的だ。対話にもならない政府閣僚との会談でも、民意を背に県の要求を一つ一つ説明する。国内外から集まった1万9千件の意見書が玉城知事を強く勇気づけている。

激戦地の土砂使う

 辺野古新基地建設で軟弱地盤の改良工事に向けた沖縄防衛局からの変更申請で見逃せない点の一つが、土砂(岩ズリ、破砕された岩石)の県内調達量と調達地域の大幅拡大だ。

 土砂に含まれる生物の外来種侵入を防止する県外土砂規制条例の適用を回避するために、県内全域から4476万3千立方bと当初計画の7倍もの土砂を調達する。県内の他の工事への供給が逼迫(ひっぱく)する事態が想定される。また採取場所も現行計画の本部町、名護市、国頭村(くにがみそん)に加え、うるま市、糸満市、八重瀬町、石垣市、宮古島市、南大東島までに拡大した。新基地工事のために沖縄島全体をダンプカーが走り回り、国道、県道などで渋滞や粉塵公害が引き起こされ、深刻な環境破壊が考えられる。

 糸満市や八重瀬町からの土砂調達は、さらに大きな問題となっている。沖縄戦で激戦地となった沖縄島南部の土地には、いまだに多くの県民や全国から動員された兵士の遺骨が土砂に混じって眠っている。

 遺骨を遺族に返す活動をしているボランティア「ガマフヤー(ガマを掘る人)」代表の具志堅隆松さんは「戦没者に対する冒涜(ぼうとく)」「南部の石灰岩地域は岩ズリを採取するために破壊してよい場所ではない。戦争で亡くなった人の遺骨を岩ズリと一緒に軍事基地を造るために埋め立てに使うなど言語道断」と憤る。県には設計変更申請の不承認を求める意見書を提出した。

 75年前の沖縄戦で20万人が犠牲となったことを顧みるならば、新たな戦争のための辺野古新基地建設は断念以外にない。  (N)



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