2020年11月13日 1649号

【「月桃の花」歌舞団 ガマ人間あらわる 神奈川公演 "私の命は私が決める"を発信 みなに支えられ最高の舞台に】

抗いと思いが形に 「月桃の花」歌舞団・神奈川 青島みのり

 10月25日、川崎市・中原平和野外音楽堂で『ガマ人間あらわる』神奈川公演を行いました。関東「月桃の花」歌舞団、初となる野外公演は天候にも恵まれ、57人もの方に見ていただき、大成功を収めました。

 私は主人公の島野のぞみ役として出演させていただきましたが、不安がありました。9月6日に同じ場所で行ったリハーサル公演で、野外で演じることの難しさを感じたからです。何度も『ガマ人間』には出演しましたが、練習はゼロから作っていくような感覚でした。

 試行錯誤をくりかえして迎えた本番、私にはキャスト全員の演技や声が客席まで真っ直ぐ飛んでいくように感じました。自分ではわからなかったけれど、のぞみの声もきっと。

 それが大きく表れたのは最後の歌、『ダイレクト』です。その場にいるお客さんはもちろん、今、見ていない誰かにも届くんじゃないかというくらいの伸びやかさで歌うことができました。でもそれは、決して野外だから開放的に歌えたということだけではありません。演じた私たち一人ひとりがコロナ禍のなかでも変わらない「私の命は私のものだ! 私が決める!」という劇のメッセージを伝えたいと動いてきたこと、文化や人とのつながりがないがしろにされてきた今≠ヨの私たちの抗(あらが)いと思いが形になったのだと思います。

 笑顔で元気が出た、勇気をもらったと言ってくれる方たちがいて、私はそれだけで本当に「あぁ、やってよかった…」とうれしくなりました。

 コロナの影響はまだまだ続き、色々ある日々だけど、これからも歌舞団の劇、メッセージを伝えていけるようにがんばっていこう。そう思える日になりました。


来年は福島で 「月桃の花」福島歌舞団 大藤圭子)

 『ガマ人間あらわる』は今までに6回ほど観させてもらい、そのうちの2回は住民役で出演しましたが、今回は主役のひとり沙織役を演じることとなりました。

 とてつもなく大きな役に不安がいっぱいで、台詞覚えに苦戦しましたが、引き受けた以上はやりぬかなければという思いから、読み合わせした台詞を録音し、それを聞きながら通勤する車中で練習する毎日でした。

 私の役は、震災後、避難を決めたにもかかわらず夫や家族に反対され、葛藤しつつも妹を南の島(沖縄)に避難させ自分は北の島(福島)に残るという姉の役でした。自分自身が体験したこと、辛かったことがリンクし、練習中も正直辛くて泣きそうになることが多かったです。

 ですが、本当にたくさんの仲間に支えられて当日を迎えたのです。だからこそ本番ギリギリまでキャストのみなさんからもらったアドバイスを生かし、そして何よりも観にきてくれる皆様に最高の舞台を観てほしい―その思いから、今までにないくらいの自分を出しきれたと思います。

 感想では、「声が聞きとれなかった」という次回に向けて改善すべき点や、本当は避難したいのに避難できない辛さから妹に当たりちらす場面を観て「北の島での辛さがグッときました」という声、「ないがしろにされる世の中であるけれど、こういう世の中だからこそ命が大切とストレートに叫ぶメッセージに生きる勇気をもらえるのだと思う」という声に、これからも、もっともっとたくさんの方に観ていただきたい、そう感じました。

 来年は震災10年目となります。国は震災での影響は心配しなくて大丈夫、もう安心安全だと国民を洗脳しています。だけどいまだ何ひとつ解決になっておらず、たくさんの方が虐げられ、苦しんでいます。だからこそ来年は、福島で『ガマ人間』を公演し、改めて考える時間を持てる機会のひとつにしたいと思います。

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