2020年11月20日 1650号

【ミリタリーウォッチング 核兵器使用禁止条約が発効確定 戦争違法化の歴史と運動の力】

 「世界終末時計があと100秒」と迫る中、この秒針を止める力強い動きが始まった。10月24日、中米ホンジュラスが核兵器禁止条約を批准し、発効に必要な50か国目となった。90日後の来年1月22日に発効する。「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)のフィン事務局長がその意義を明確に語る。「核軍縮にとって新たなページが開かれた。何十年にもわたる活動が、多くの人々が不可能だと言ってきたことを成し遂げた。核兵器は禁止された」

 核兵器禁止条約を否定する側の「核保有国が加わる見込みがないから無力だ」との宣伝は何の根拠もない。「核保有国が条約に入らなかったとしても、核兵器は違法であるとの国際法規範によって、核兵器は『力のシンボル』から『恥のシンボル』に変わる」(ICAN川崎哲国際委員)。核兵器を非人道兵器とする国際規範が誕生することで、核軍縮を迫る圧力になることは明らかだ。

 米国など複数の核保有国が条約の発効を遅らせるために「(非核保有国に)激しい圧力を加えていた」(10/26フィン事務局長)ことが暴かれたが、核保有国にとって核兵器禁止条約がどれほど脅威となっているかがわかる。

 「戦争の違法化」と「戦争の手段を制限する国際人道法の発展」の歴史が保有国のエゴを大きく規制してきた。1928年の不戦条約、45年の国連憲章、46年の日本国憲法第9条もその流れの中にある。生物兵器禁止条約が72年に作られ(75年発効)、化学兵器禁止条約が93年に作られた(97年発効)。対人地雷禁止条約は97年に作られ、99年に発効し、クラスター弾禁止条約は2008年に作られ、10年に発効した。米国、ロシア、中国など主要保有国はこれらを拒否しているが、「悪の烙印」を押されたことで生産、輸出入、使用を大幅に削減した。

日本政府を動かそう

 日本政府は、ここに来ても核兵器禁止条約に背を向ける姿勢を崩していない。だが国際世論の高まりを受け、与党である公明党が政府に対して条約締約国会議へのオブザーバー参加検討を求める要望書を提出する動きも出ている。国内の世論調査でも72%が「条約に参加すべき」であり、全国の自治体の4分の1を超える495の地方議会が、政府に署名や批准を求める意見書を採択している。

 核兵器禁止条約の発効を機に、地域・自治体から「条約に参加を」の声を集中する時だ。日本政府を動かすことができるなら、世界を大きく変えることができる。それはまた朝鮮半島の非核化に繋がり、北東アジア非核平和地帯へと確実に発展していく。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会

核兵器禁止条約を批准した50か国

 ガイアナ、タイ、バチカン、メキシコ、キューバ、パレスチナ、ベネズエラ、パラオ、オーストリア、ベトナム、コスタリカ、ニカラグア、ウルグアイ、ニュージーランド、クック諸島、ガンビア、サモア、サンマリノ、ヴァヌアツ、セントルシア、エルサルバドル、南アフリカ、パナマ、セントビンセント及びグレナディーン諸島、ボリビア、カザフスタン、エクアドル、バングラデシュ、キリバス、ラオス、モルディブ、トリニダード・トバゴ、ドミニカ、アンティグア・バーブーダ、パラグアイ、ナミビア、ベリーズ、レソト、フィジー、ボツワナ、アイルランド、ナイジェリア、ニウエ、セントクリストファー・ネイビス、マルタ、マレーシア、ツバル、ジャマイカ、ナウル、ホンジュラス
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