2020年11月20日 1650号

【11・4ZENKO中央省庁行動 避難当事者と住宅問題で国に要請 責任を問い検討・協議を迫る】

 11月4日中央省庁行動で、財務省・国土交通省には国家公務員宿舎に入居する原発事故区域外避難者の住宅確保を要請した。福島県は入居者4世帯に明け渡しを求め提訴し、30数世帯には継続入居契約当時の使用料の2倍にあたる請求で避難者を追い詰めている。家主である財務省には原発被害者への対応の責任を追及し、国交省には公営住宅の避難者への提供を求めた。

 県が避難者に明け渡しを求めて訴えることに国(財務省)は関与・同意したのか―責任を問うと「裁判で係争中のためコメントできない」と返答。要請に立ち会った福島みずほ参院議員は「裁判中であっても、客観的な事実を聞いているので答えてください」と怒る。

 「所有者でない福島県が国の持ち物から出て行けと提訴する権限があるのか」判断を求めると「国有財産法に基づいて福島県に住宅の使用許可をしている。使用を注意する権利は県にあるから、県の判断で提訴したと考えている」と返答した。「『使用を注意する権利』はあったとしても、法的手段で『立ち退き』を強要する権限まであるのか」。財務省は沈黙した。

 2019年3月に避難者が「一時使用許可申請書」を提出した際、県は「施設の所有者ではなく、使用許可権限を有していない」と答えている。被告の避難者が、裁判には国が出てこい、と要求したら応じるのか問うと「要請があればその時点で検討する」と返答した。

2倍請求やめて

 17年4月以降の宿舎継続使用の期限設定については、財務省側から2年間を示したことを認め、「それ以降は状況を踏まえて検討ということで、期限を超えた内容の場合は再協議することになった」と言う。19年で継続入居がすべて終了ではないことは双方が共有していた。生活保護受給者についてはその通り継続入居の延長を行った。いきさつを財務省は「期限を迎えるにあたってやむを得ない事情のある避難者に対して延長要請があった」と説明。

 「それでは、生活困窮者や精神疾患者らがなぜやむを得ない事情≠フ者から外されたのか」と尋ねたが、「福島県に示された通りに。財務省として(居住者への)独自の調査は行っていない」。県の提示を鵜呑みにした責任が問われるところだ。

 背景には県への誤った評価がある。「県には、住宅や生活再建の支援を取り組んでいただいています」と述べた。追い出し提訴や2倍請求も住宅や生活再建への支援≠ニいうのか。

 当事者が発言する。「事情のある者の中に、なぜ経済困窮者や精神疾患者が含まれないのか」「都営住宅に入るため努力しても何度も落選している」

 2倍請求相当分は県が9月分まで国に納めている。「福島県が『入居者からはとれる状況にないから、許可書通りには納められない』と言えば、国はどうするか」。「その話を伺うことになる」と柔軟性を見せた。

 避難者の実態をつかむ当事者と国の聞き取りの場の設定、2倍請求の扱いについて国と県の協議を求めた。財務省は「持ち帰って報告、検討する。今月中に福島みずほ議員事務所に回答する」と約束した。

都と協議を

 国交省には、放射能被害を想定していない公営住宅法の紋切り型適用を避難当事者が批判し、困窮している実態を訴えた。「田村市の自宅の線量は部屋の中でも0・7マイクロシーベルト、玄関先の土壌は放射線管理区域の倍の1平方メートルあたり8万ベクレル。帰れる状況にない。事故当時賃貸住宅だった方も住宅の滅失≠ノあたり、住宅困窮者だ」。国家公務員宿舎にとどまる多くの区域外避難者は公営住宅への入居を求めている。「大変な状態の方が今残られていると思う。公営住宅の世帯要件が壁で、とくに単身者の入居が問題になっているんですね。改めて丁寧に都にも伝えていく」と理解を示した。

 国と東京都との協議の場を求めると、国交省は「住宅ストックのことも含め都と話し合っていくことになる。その経過を報告する」と約束した。



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