2020年11月27日 1651号

【自民区議のLGBT差別発言撤回 謝罪/当事者とともに新制度創設へ 東京都足立区議・土屋のりこ】

 「L(レズビアン)やG(ゲイ)が法律で守られると足立区が滅んでしまう」―9月25日、本会議での自民党白石正輝区議による性的少数者差別発言をきっかけに区内に住む当事者らが声を上げ、性的少数者政策で大きく前進をかちとることができた。地域に住む人が自ら地域のことを決める、住民自治の勝利でもある。

「姿をあらわそう」

 10月9日、第1回目北千住街頭アクションを行った。「白石議員の登庁にあわせて区役所前でスタンディングしては」「私たちはここにいると姿をあらわそう」「区の職員にもアピールし制度を作ってと訴えよう」。本会議最終日、区役所前でスタンディングアクションをすることが決まった。

 10月13日、「全国から集まった約3万3千筆の署名を区へ提出したい」と相談を受け、初めて当事者団体と副区長との面談が実現。20日最終本会議で、世論に包囲された白石議員は発言撤回と謝罪、厚生委員長辞任を余儀なくされる。区長は専門相談窓口の設置や当事者らとの意見交換の場を設けること等を約束した。

吹っ飛んだパンドラの蓋

 これまで足立区での性的少数者政策は、触れると自民党長老議員の怒りを買うとタブー視され、「パンドラの箱」状態だった。今回その箱のふたを当の本人が吹っ飛ばし、区としても態度を決めざるを得なくなった。勇気をもって声を上げた当事者やアライ(支援者)メンバーの闘いが及び腰の区を強く後押しし、推進へと舵が切られた。

 10月29日、11月4・10日、当事者と区長の意見交換が持たれ、計14人の当事者が参加した(4日と10日は私がコーディネート)。

 今回の事件を受け、足立当事者の会を立ち上げたバイセクシャルの女性は「今回の差別発言を知った時には、衝撃で体全体がしびれるような、血圧が上がったような、呼吸がとまったような感覚がした」。

 親にも地域にも自分がゲイだとカミングアウトしていない男性は「信頼して打ち明けたゼミの先生から『本当かよ、近寄らないでくれ』と。カミングアウトできない現状を変えるため地域住民への啓発を」。

 トランスジェンダーで、区内で就職相談にあたっている方からは「トイレや更衣室が問題にされ、就職を拒否された事例がある」と、求職の困難と貧困問題が語られた。「区の相談窓口にそういった人が来たら、すぐにつないでほしい」

足立の歴史が拓かれた

 次々と思いがほとばしる。「25歳レズビアンで、パートナーの妊娠を目標に、子育てを前提として足立区で暮らしている。誕生させようとしているその人が、世間から差別されない未来を願う」「住まい探しで困らなかったことは無い。同性どうしでの同居に不動産屋から不信感をもたれる。医療機関でも不安。パートナーが万一の時、搬送先の病院を教えてもらえないかもしれない。制度ができれば民間業者にも啓発・浸透を」「パートナーシップを結んだカップルは不妊治療助成も活用できるように」「子どもも含めたファミリーシップ制度創設を」

 区からも積極的に質問が出され、当事者が答える。「パートナーシップの窓口はどこがいいか」には「人権窓口でなく婚姻と同様(戸籍で)扱ってほしい」。「先行自治体のパートナーシップ制度での具体的課題は」―「公正証書が前提とされたり、区内で引っ越すと無効になったりする」

 当事者の声を受け、区長は「パートナーシップ制度については、先行自治体を参考にして作っていくということで考えている。意見交換をしてできることからやっていきたい」と述べた。

 開いたパンドラの箱はもう元に戻らない。性的少数者の人権を守り、パートナーシップ制度創設へ。足立区の歴史が拓かれた。



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