2020年12月04日 1652号

【MDS集会基調講演/トランプ、維新敗北は民主主義的社会主義への前進/菅内閣の強権的新自由主義政策止める】

 11月21日から12月にかけて全国14か所で開かれる「菅政権の新自由主義路線と対決し、民主主義的社会主義に進もう MDS集会」の基調講演要旨を紹介する。(まとめは編集部、4・5面に関連記事)

トランプ敗北 都構想否決

 米大統領選でのトランプ敗北、大阪市住民投票における維新敗北は新自由主義を終わらせ、民主主義的社会主義に進む大きな勝利だ。

 トランプは、グローバル資本主義の作り出した格差、貧困に苦しむ市民の怒りを排外主義、人種差別で組織しようとしてきた。しかし人命軽視の非科学的コロナ対策、BLM(黒人の命を軽んじるな)の闘い、格差の一層の拡大の中、敗北した。コロナ危機で失業者が大幅増となる一方、ベゾス(アマゾン)ら富豪5人は3〜6月の間に保有資産を合計1017億ドル(約10兆8千億円)増加させた。

 このような極端な格差拡大に苦しむ青年たちが資本家優遇のトランプを拒否した。18―29歳の青年の投票率は2016年の45%から53%に上昇し、出口調査ではトランプに投票は35%、バイデンは62%だった。

 だが、バイデンは民主党主流派の候補であり、メディケア・フォー・オール(すべての人への公的医療保険)には賛成しなかった。

 現在の米国社会の進むべき方向はDSA(アメリカ民主主義的社会主義者)、サンダースらが示した方向だ。トランプ敗北は「奈落の底へ真っ逆さまはもうなくなったということ」(オカシオコルテス)であり、民主主義的社会主義への運動の強化が一層必要だ。

 日本でも、自公政権の別動隊「維新の会」が進めようとした「大阪都構想」を阻止し、戦争、改憲、新自由主義路線に大きなダメージを与えた。

 維新は大阪府・市を支配し、公務員攻撃・削減、民営化、社会保障削減の新自由主義政策を進めてきた。維新は都構想で大阪市を解体し、財源と権限を奪い、カジノ、大規模開発に資金を集中しようとした。

 だが住民投票で勝利したのは市民だった。MDSは「平和と民主主義をともにつくる会・大阪」、ZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)とともに全力で闘った。これまで「維新支持」と言われてきた10―20代の青年層でも住民投票で反対が多かった(図表1)。改憲・新自由主義路線で維新と蜜月関係の菅政権には大きな打撃だ。



 米大統領選・大阪市住民投票で青年層が新自由主義否定の方向に踏み出している。我々は世界の民主主義的社会主義を目指す人々と連帯し、新自由主義の息の根を止めなければならない。

菅政権は何をするのか

学術会議の任命拒否

 菅政権の強権的本質が露呈したのが日本学術会議任会員任命拒否問題だ。

 憲法の学問の自由(第23条)、思想良心の自由(第19条)、言論の自由(第21条)、学術会議法違反だ。拒否された6人は戦争法、秘密保護法、共謀罪、辺野古埋め立てに反対してきた学者だ。この学者たちの排除を担ったのが警察官僚出身の杉田官房副長官だ。菅は国会答弁でもなぜ6人を拒否したかまともに答えることができず、支持率を大きく落とした(図表2)。



 人事によって自らの方針を貫徹しようとするのは菅が一貫して取ってきた手法だ。組閣後「方針にしたがってもらえない場合は異動してもらう」と述べ、今後も人事で官僚支配を続けることを強く表明した。さらに学術会議会員人事にも手を出し、憲法・法律違反をしてまで支配を強化しようとしている。

カネもうけと軍事優先

生存権奪う「自助」強要

 菅は10月26日所信表明演説で戦争・新自由主義の推進を宣言した。演説の最後に「私が目指す社会像は、『自助・共助・公助』そして『絆』です」と述べた。

 コロナ禍で苦しむ市民に対し、自分で生活をまもれと強調する。社会保障にはカネを回さず、軍事費、大規模事業に使うためだ。

 菅のブレーン(図表3)の竹中は、1人月7万円を政府が支給し、財源は生活保護費や年金を廃止して作るという。生活できるわけがない。自助が基本で公助が最後という政策と一致し、市民の生存権を奪う。

 同じくブレーンのアトキンソンは、中小企業保護政策をやめ最低賃金引き上げで淘汰すべきとする。最低賃金は労働者の生活改善のため政府の中小企業支援策とセットで引き上げるべきで、淘汰の手段ではない。菅政権は「成長戦略会議」で中小企業基本法改定、中小企業再編を進めようとしている(11/13朝日)。

 コロナ危機の下でグローバル資本は政府から手厚い金融支援を受け、富裕層は資産を増やした。今必要なことはグローバル資本、資本家への課税強化であり、市民への生活保障だ。


デジタル化で市民支配

 菅はデジタル化も打ち出した。狙いは膨大な個人情報を政府、グローバル資本に集中し、その情報に基づき市民を支配し、利益を上げさせることだ。

 米大統領選では、フェイスブックの情報などから有権者の思想傾向をつかみターゲットを絞った広告で支持を獲得したとの報告がある。システム構築に関わる富士通、日立、NTTなど情報産業に巨大な市場を作り、個人情報を利用するグローバル資本に市場を提供する。政権にとっては支配を継続させる道具となる。

 これほど激化した格差の下で現在の路線をすべての市民に納得させることはできず、巧妙な情報操作で誘導するしかない。「デジタル化」はグローバル資本に市場と支配力をもたらす。

新基地・原発推進と改憲

 沖縄県民の意思を無視し、普天間飛行場の危険性を最低10年以上も放置しても、建設企業に市場を提供し、軍事力強化は譲らないというのが菅政権の意思だ。

 エネルギー政策で支配層は「2030年までには新型炉の建設に着手すべく、国家プロジェクトとして取り組みを進める必要がある」(11/11経団連「新成長戦略」)と原発新増設を明確に主張している。「温暖化対策」を口実に原発を推進することは認められない。

 菅は、憲法審査会での「与野党の枠を超えた建設的な議論」を求めた。維新、国民民主党と手を組み改憲を進めるつもりだが、維新の敗北でダメージを負っている。改憲策動を完全に封じていかねばならない。

強権支配は続かない

 安倍政権はモリカケ・桜、検察庁人事での不正と格差拡大への市民の怒りの前に倒れた。安倍を引き継いだ菅政権は強権支配を加速する内閣だ。だが発足間もなく、トランプと維新の敗北を突きつけられた。強権支配はいつまでも続けられない。

 重要なのは横浜・林市長リコール運動の勝利だ。菅はカジノ推進の中心人物だ。大阪市住民投票に続きリコールを成立させ、カジノを阻止すれば、菅政権を大きく揺さぶることができる。

 菅政権に対し、PCR検査など抜本的医療拡充による新型コロナ対策を迫ろう。解雇を禁止し、市民生活を保障させ、社会保障・教育を拡充させよう。財源は軍事費削減、グローバル資本と資本家への大幅増税だ。

 グローバル資本主義に終止符を打ち、民主主義的社会主義に進もう。
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