2020年12月04日 1652号

【大阪「都構想」復活狙う維新/広域行政一元化・総合区セット案表明/どこまで民意を踏みにじるのか】

 大阪「都構想」は住民投票(11/1)で否決された。敗戦の弁を述べた松井一郎大阪市長と吉村洋文大阪府知事だが、今度は「広域行政一元化」と「8区総合区」を来年の2月議会に条例提案すると表明。大阪維新の会は大阪市解体に失敗したものの、都構想で狙った財界のための市民の税金ぶんどりをなおも画策している。大阪市から権限と財源を奪う「広域行政一元化」と市民サービス切り捨ての「総合区」セットに衣を変えた都構想復活を許してはならない。

民意否定の脱法行為

 「広域行政一元化条例」とは何か。大阪市が権限を持つ成長戦略や都市・港湾整備計画、交通基盤整備、公共上下水道、消防、大学、高校、公園、河川など約430の事務とその財源である約2000億円を大阪府に移管し、「広域行政の一元化」を可能にする。そのため、都構想推進のための暫定的機関であった「副首都推進本部会議」を廃止するどころか、恒久的組織にするという。

 詳細は明らかにされていないが、なんのことはない。都構想の協定書とまったく同じ内容ではないか。万博、カジノをはじめ地下鉄延伸、駅前開発など大規模事業を行うために、大阪市からの権限・財源ぶんどりを今度は条例で強行しようというのだ。その司令塔となるのが、「副首都大阪の発展の起爆剤=大阪万博とカジノ・IR(統合型リゾート)」と位置づける「副首都推進本部会議」というわけだ。都構想否決の翌日、いち早く「副首都に向けた府市連携の強化、成長戦略の必要性」を訴えた大阪財界の要求に見事に応えるものだ。

 こんなことが条例でできるのか。報道によれば、総務省は「事務委託は議会の議決で可能」と表明したという。しかし、政令市の430もの権限を一括して事務委託することは自治体制度の変更とも言うべきもので、地方自治法は想定していない。だからこそ住民投票が行われた。その住民投票で市民は、政令市である大阪市の存続を選択し、その権限と財源・財産を市民の自治権のもとにとどめることとしたのだ。にもかかわわらず松井と吉村は「二重行政をなくすことが民意」とすり替えて提案理由をこじつけている。

 今回の条例案は、地方自治法上の脱法行為であり、住民投票の制度と示された民意を否定し議会の議決案件にすり替える暴挙である。

住民サービスに差

 維新が同時に提案した「8区総合区案」は、すでに2017年吉村市長(当時)が「都構想否決の際には総合区で代替」と表明していたものだ。地方自治法に定める政令市の総合区は、条例により現在の行政区に代えて設けることができる。総合区長は議会の同意が必要となる特別職で、独自の予算と人事権をもち、総合区に関する行政はおおむね実施できる。

 要するに、「広域行政一元化条例」で事務移管が行われた総合区は区長公選制及び独自区議会をもたないが、都構想の特別区と類似したものとなる。

 松井らの提案は住民意思も全く無視し、否決された特別区の復活を狙うものだ。橋下徹元大阪市長は「総合区では、サービスに差が出る。(財政調整について)総合区も(予算)ぶんどり合戦になる」と述べていた。つまり、合区して再編した総合区に削減した予算をあてがって、その範囲内で市民サービスを総合区に丸投げする。そうすれば、より多くの税金を大規模事業につぎ込むことが可能となるわけだ。

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 「広域行政一元化」と「総合区」制度創設をセットにして進める狙いは、都構想に代わるグローバル資本の要請に応える政策とすることであり、大規模開発に予算を振り向ける「実質上の都構想」に他ならない。

 今必要なのは、政令市である大阪市の権限と財源・財産をフルに活用し、コロナ対策をはじめ、医療・介護・保育・教育・貧困対策など社会保障を充実し、市民生活を第一に公的責任を拡充する市民のための真の改革を進めることである。

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