2020年12月04日 1652号

【学術会議任命拒否は自由の抑圧/ジェンダー平等実現に逆行】

 菅政権の日本学術会議任命拒否は、ジェンダー分野での研究発展にブレーキをかけ、ジェンダー平等社会の実現に逆行するものだ。

 学術会議は、選択的夫婦別姓や性暴力に関する刑法改正などの提言や勧告を行ってきた。日本のジェンダーギャップ(性差による格差)を改善し、国際的な水準に引き上げることに貢献している。

 学術会議自身、菅の「口撃」とは反対に会員に占める女性の割合も増やしてきた。05年の会員選出方式を会員・連携会員の推薦に変更したこともプラスとなり、女性会員の比率は6・2%から37・7%にまで増えた。ジェンダーバランスが改善され、多様な意見が反映される。研究内容も継承されるようになりつつある。任命拒否は、学術会議のこのような努力を否定し、組織運営に介入するものであり、到底許されない。

研究者を誹謗中傷

 学術会議に限らず、学者に対する攻撃は、安倍政権の時代からあった。思い起こされるのが、ジェンダー平等社会実現のための研究に対する科学研究費助成金交付についての攻撃である。

 自民党の杉田水脈(みお)衆院議員は、日本軍「慰安婦」の研究を「ねつ造」と決めつけ、「国益を損ねる」研究への科学研究費助成を問題視した。フェミニズム研究者に「反日」とレッテルをはり、ネットや雑誌などのメディアで研究者への偏見にもとづく誹謗中傷を続けた。学問の自由に対する攻撃だ。

 19年2月、同志社大学の岡野八代さんをはじめとする4人の学者が、杉田議員を名誉棄損で訴えた。裁判が続いている(フェミニズム科学研究費裁判)。学術研究分野も国家の支配下に置こうとする動きを、女性たちは見逃さない。

すべての市民の問題

 ジェンダーの視点から任命拒否問題に抗議の声が上がっている。学術会議の会員だった上野千鶴子さんは「私たちジェンダー研究者は、調査し、研究し、データをまとめて、社会を説得してきた。学問によって社会を変えてきた」「この問題を見過ごすと、あなたの自由がなくなり、言いたいことが言える社会でなくなるかもしれない。決して対岸の火事だと思わないでください」と訴える。

 また、日本女性学会は「任命拒否が社会的少数者のおかれた環境や社会的状況の改善を一層困難にする」と指摘する。女性労働問題研究会は「女性が真に活躍できる政策作りには、自由な研究と政府に率直に提言できる条件の保障が欠かせない」と表明。他にも多くの女性団体が抗議声明を出している。

 ジェンダーはもとより、すべての市民の問題として抗議を広げていこう。

(OPEN〈平和と平等を拓く女たちの絆〉・山本よし子)
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