2020年12月04日 1652号

【コロナ禍の時代こそ 労働組合は働く人の尊厳を 解雇は禁止だ 雇用破壊は許さない】

 団結まつり前日の11月14日、大阪市内でZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)となかまユニオンの主催でプレ企画「解雇は禁止だ!コロナ禍の雇用破壊を許さない学習集会」が行われた。

 なかまユニオン執行委員長の井手窪啓一さんが「厚生労働省は雇用調整助成金の特例措置見直しに舵を切ったが、間違っている。兼業・副業を促進しコロナ禍で雇用破壊を一層進めようとしている。許さない闘いをつくろう」と提起した。

解雇禁止を第一に

 韓国の労働状況を、希望連帯労組チェ・オス組織局長が報告。1970年11月13日、「労働基準法を順守せよ」と叫び22歳で焼身自殺した労働者チョン・テイル50周忌行事の時間を割いてのリモート参加だ。

 韓国における新型コロナウイルスによる経済危機を口実とした無差別解雇の規模は、1997年のIMF(国際通貨基金)危機以上。意図的な「経営実績悪化」を名分に大規模リストラを断行する大企業も出ている。

 民主労総は、全組織的な連帯闘争で雇用を守るために政府の責任を追及。危機の克服へ、労働者の解雇禁止を国の政策の第一基準とし、(1)新型コロナ期の一時解雇禁止(2)雇用義務の強化等のための法制度改善(3)IMF危機に乗じて企業に「解雇自由権」を与えた勤労基準法の整理解雇条項廃止−を求めている。

イタリアでは禁止法制

 リモートでの講演は、龍谷大学名誉教授の脇田滋さんによる「コロナ禍と闘う世界の労働運動」。

 国際的な状況として、▽コロナ感染者の7人に1人は保健医療労働者で7千人以上が死亡▽ILO(国際労働機関)によれば年末までに新規失業者は2500万人を超え、所得の減少・損失は368・4兆円▽非正規労働者の失業は正規職の7倍−と指摘した。

 労働組合運動では、(1)安全・健康の確保(2)不可欠業務労働(エッセンシャル・ワーク)に対する保護(3)解雇反対と雇用維持、の観点が重要としてイタリアや韓国などの運動を紹介した。

 イタリアでは、ナショナルセンターが非正規も含む全労働者を代表し、社会的に弱い層を重視している。

 新型コロナの爆発的感染にイタリア政府は2月23日、「国家非常事態宣言」を発出。3月初め「解雇の雨」と呼ばれる深刻な状況となった。CGIL(イタリア労働総同盟)等の3大労組は政府交渉、政労使会議などを行い、ゼネストを構え危機打開策を要求した。

 3月16日、政府は「Cura Italia(イタリアを治癒)」と呼ばれる「解雇禁止」法制を導入。これは、5月16日まで解雇を禁止する条項を設け、危機の際、雇用を守るためのあらゆる手段が使われるべきとして、(1)家計支援(2)非正規労働者、自営業者も含む労働者給付(3)保健サービス給付等が盛り込まれた。

 政府は3大労組との交渉を経て予算を増額。5月には法制を改正し、解雇停止をさらに3か月延長し、計5か月間となっている。

 韓国でも民主労総が、コロナ災害時のすべての解雇禁止を要求、非正規職を減らす運動に取り組み、政府の対策に反映させている。

全体の要求を代弁

 脇田さんは、労働組合が未組織労働者を含め全体の要求を代弁し実現する役割を果たすことを強調する。

 組合組織率17%と低い日本へのヒントもイタリアにある。組織率は20〜30%だが、団体協約の適用率は80〜90%。労働組合の闘いが社会全体に影響している。そのイタリアで語られる「労働組合は現場にしっかり足をつけて闘い、高い視野から周囲の社会を広く見渡せる『ケンタウロス(ギリシア神話の半人半馬の神)』のような活動をしなければならない」との話を紹介。なかまユニオンへの期待の言葉で講演を終えた。

 雇用危機の今、全労働者の利害を代表して行動する労働組合をめざし、なかまユニオンは闘いを強める。



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