2020年12月04日 1652号

【未来への責任(311)強制動員犠牲者の遺骨を遺族に(上)】

 2020年11月13日から14日、韓国済州島(チェジュド)にて「日帝強制占領期における強制動員犠牲者の遺骸に関する国際シンポジウム」が開かれた。

 会議では、日帝強制動員被害者支援財団のファン・ドンジュンさんから、タラワ島の遺骨鑑定について注目すべき報告があった。同島で戦死した6497人のうち日本兵の死者は4713人で、そのうち1200人は朝鮮人であった。戦死した日本兵の4分の1が朝鮮出身者だった。

 タラワ島の遺骨については米軍戦没者遺骨鑑定機関(DPAA)が主導で日米韓の共同鑑定が行われているが、韓国人遺骨と遺族について韓国国立科学捜査研究所(NFS)の親子関係の鑑定が99・9996%という驚異的鑑定結果であったことが報告された。同じケースに対する2019年10月の日本の鑑定書、同年11月の米国の鑑定書と、3国の鑑定が出そろった。その後日本人遺族2人も確認された。

 なぜこのような共同鑑定に進んだのか。日本のNGOは沖縄を除き、今まで現地で収集した遺骨をDNA検査などの個人を識別する手続きも経ずに直ちに火葬している。そのことを知ったDPAAの韓国籍のチン・ジョンヒョン博士が、2018年4月に韓国の遺骸発掘鑑識団にこの事態を知らせた。同年9月には韓国行政安全部過去事関連業務支援団がDPAAに遺骨の管理状況と処理計画を問い合わせ、日本に対して遺骨の任意の処分を禁止するように要請。そのような運動を背景に、2018年12月に韓米の円滑な遺骨鑑定の協力を定めた業務協約、2019年8月には韓国NFSとハワイのDPAA支部長間で業務協約が結ばれている。一方、日本は米韓に先行される形で2019年4月遺骨の検体をハワイから持ち帰り共同鑑定に加わっていくことになる。

 2020年1月21日に国会議員会館で日韓のマスコミを集め大きく成功した厚生労働省・外務省との意見交換会で、はじめてタラワ島の韓国人遺族が確認されたことを外務省が認めた。そして、韓国から具体的提案がないという厚労省の詭弁は消え、外務省は「韓国の行政安全部・外務省をカウンターパートナーとして適切に対応していく」と答えるに至った。この意見交換会での「遺族は焼骨を求めていない」という遺族の声が全国的に報道されたのを契機に、厚労省は現地での遺骨焼骨を今年5月よりやめるようになったのだ。

 2020年11月15日、沖縄ボランティア・ガマフヤーの具志堅隆松代表は「タラワ島の新情報に接して厚労省への公開質問」を出し、連絡会も20日には国会議員を通じた厚労省ヒアリングをおこなった。《続く》

(「戦没者遺骨を家族の元へ」連絡会 上田慶司)

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