2020年12月11日 1653号

【子どもの貧困をなくし社会で育てる コロナ以前からの実態を変える 東京・足立区でつどい】

 地域から子どもの貧困と闘っていこうと11月14日、東京・足立区内で「子どもの貧困をなくし、子どもは社会で育てる足立をめざすつどい」が開催された。主催は「平和と民主主義をともにつくる会・東京」。

 司会の河辺友洋さんは「区はプロジェクトを作って子どもの貧困を取り上げてはいるが、『経済的困窮だけでなく』とすることで根本である経済的支援を抜きに対処療法的対応に終わっている」と指摘する。

 つどいのメインは「子どもの貧困を社会的に解決するためには」と題した阿部彩東京都立大人文社会学部教授による講演。

 阿部さんは「子どもの貧困がコロナ禍で話題にされているが、医療費が払えないための受診抑制などコロナ以前からあったこと」と数値を挙げて説明した。2017年の全国調査(国立社会保障・人口問題研究所)では、電気・ガス・水道・電話の料金が支払えない世帯が全体の3%、家賃未払い世帯は5%を占めた。必要な食料が買えなかった世帯は35%にのぼる。

 「『相対的貧困』と言っても、ライフラインが止められるような生活実態で死にもつながりかねない。コロナ禍での貧困化対策は一時的な給付金、貸付制度にすぎない。緊急時だからとの理由だが、それでは以前からある実態を変えられない。普段から、児童扶養手当を引き上げてもらいたい」と警鐘を鳴らす。

子どもの意向尊重を

 東京の子どもの生活実態調査で、困窮層では7割の世帯が食料さえままならない。授業の理解度は小5で3割、中2で5割が「わからない」、いじめられた経験ありと答えたのは小5で約26%あった。「小学生から、授業がわからない、いじめとなれば、学校へ行くこともきつくなる。そうさせたら公教育の失敗ではないか。コロナで少人数学級が言われているが、感染対策以前に導入されるべきだ」

 子どもの貧困対策法改正に触れ、「これまでの目的『貧困対策の推進』に『貧困の解消』が加わった。様々な対策は、子どもの権利の尊重からなされるとの理念を打ち出した。母親が夜まで働き、子どもが一人で食事をしてさみしくみじめな思いを重ねていても、『その解消は法の目的ではない』とはねられていたが、現在の状況の改善が掲げられた」と評価した。

 政策の方向性として強調されたのは、子どもの意向の尊重。「静かに勉強できる場がほしい、ボール遊びのできる公園を、などなど。子どもの要求をかなえる政策すら実施されてこなかったのではないか」

 「無料学習塾や子ども食堂は“川下対策”で、起こった貧困に対し民間で対応しているもの。公共としては、すべてを対象に貧困を生まない、拡大しない政策が“川上対策”として問われる。両方を進めなければならない」と訴えた。

パントリーに60世帯超

 土屋のりこ足立区議は、子どもの未来応援事業やコロナ禍でのひとり親支援、奨学金対策の取り組みを報告した。また、「貧困の連鎖を断ち切るためには青年層が安定した収入を得ることが大切。住宅や雇用支援などを進める『あだち青年条例』の制定を考えていきたい」と話した。

 千住フードパントリーは、昨年12月の発足以来、利用者が10世帯から60世帯を超えるまでに増えている。

 責任者の藤平りつさんは「ひとり親世帯や障がい者世帯、高齢の単身世帯などからの要望が多い。コロナ禍を反映して、仕事が厳しくなった方や大学生からも求められている。小さな子どものいる家庭には宅配を行い喜ばれている。事業は、チャリティではなく、利用者と対等な立場で一緒に進めていくことをめざす。安定した運営のため区から補助金が出るよう、みなさんの力を借りて実現させたい」と述べた。



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