2020年12月11日 1653号

【疑惑再燃「桜を見る会前夜祭」/安倍の答弁、やはり嘘だらけ/でたらめ男を支えた菅も同罪】

 安倍晋三前首相の政治団体が主催した「桜を見る会前夜祭」をめぐる疑惑が再燃している。全国の弁護士や法学者の告発を受けた東京地検特捜部の捜査で判明した事実により、安倍が国会でくり返してきた説明が虚偽答弁であることが明らかになったのだ。

補填の事実が判明

 前夜祭は2013年以降、「安倍晋三後援会」が地元山口県の支援者らを招き、東京都内の高級ホテルで毎年開催していた。2019年の会には約800人が参加。会費は1人5千円だったが、通常は最低1万1千円はかかるプランを利用していたため、「安すぎる」「不足分は安倍側が出しているのでは」という疑惑が持たれていた。

 実際、参加者の会費だけではまかなえず、過去5年間で不足分の約900万円を安倍側が補填(ほてん)していたことが明らかになった。任意で特捜部の事情聴取を受けた安倍の公設秘書が認めた。ホテル側が毎年発行した領収書のあて名は主催した後援会ではなく、安倍が代表を務める資金管理団体「晋和会」だったという。

 後援会と晋和会の政治資金収支報告書に前夜祭の記載はない。特捜部は領収書の提出を求めたものの、確認できなかったという。安倍側がすでに廃棄したとみられている。

 法的には次の2点が問題になる。@差額の補填は選挙区内の有権者に対する寄付行為(もしくは買収)にあたり、これを禁じた公職選挙法に違反する。A前夜祭の収支を政治資金収支報告書に記載しなかったのは、全ての収支を明らかにすることを求めた政治資金規正法に違反する。

 安倍の秘書らは、政治資金収支報告書に記載すれば不適切な支出だと指摘されるおそれがあったため、2014年分以降は記載しないことにしたなどと、周囲に説明しているという(11/27NHKニュース)。

 小渕優子経済産業相(当時)の政治団体が支援者向け観劇会の収支を虚偽記載し、大臣辞任に至った事件を意識していたことは間違いない。小渕は報告書の内容を疑問視され費用の補填がバレたので、そうならないように丸ごと「なかったこと」にしたのだろう。

息を吐くように嘘

 首相在任中、安倍は国会で「事務所側が補填した事実はない」と断言してきた。費用は個々の参加者とホテルの直接規約により支払われたので「後援会としての収入、支出は一切ない」。さらには「ホテル側から明細書等の発行は受けていない」という常識外れの主張をくり返してきた。

 これらはすべて嘘だった。衆院調査局によると、安倍は前夜祭の問題に関し、2019年〜20年の国会において少なくとも33回、事実と異なる答弁をしていたという(11/26毎日WEB版)。「息を吐くように嘘をつく」とはことのことだ。これは安倍の決まり文句で「民主党攻撃」の際に連発していたが、嘘つきは自分の方だった。

 安倍サイドは「事務所の秘書が安倍氏に虚偽の報告をした」(11/24産経)とのストーリーを広めようとしている。この期に及んで秘書のせいにして責任回避を図るとは、卑怯未練と言うほかない。野党が求める安倍の参考人招致や証人喚問を拒む自民党・公明党にしても、虚偽答弁を重ねた安倍と同じく、国会の存在意義を否定している。

捜査つぶしの意図

 7年8か月に及んだ第二次安倍政権は嘘とごまかしのオンパレードであった。前夜祭に限らず「桜を見る会」本番の疑惑もまったく解明されていない。森友・加計学園事件も同様だ。見え透いた嘘の連発で国会を乗り切ろうとし、バレないように証拠となる公文書を隠滅・偽造した。

 そのうえ、検察組織を支配することで事件化を防ごうとした。「官邸の守護神」と呼ばれた黒川弘務・東京高検検事長(当時)を検事総長に据えようとした件がそうだ。動機の一つに「桜を見る会」の問題があったことは明らかだ。

 ある政治ジャーナリストはこう指摘する。「安倍は、桜を見る会問題で検察の捜査が始まると、父親の代からの後援者が次々に聴取を受け、さらに自分も聴取を受ける恐れがあると考え、そうした事態を避けたいという強いモチベーションを持っていた」(週刊文春12月3日号)

 嘘つきを総理大臣にすると、被害は法治国家の根幹に及ぶということだ。倫理観・道徳観の空洞化を招くという点で、社会的な悪影響も計り知れない。

 菅義偉首相は「答える立場にない」と述べ、この問題への答弁を避けている。冗談ではない。菅は安倍内閣の官房長官として、数々の証拠隠滅工作を指揮してきた。「知らぬ存ぜぬ」で逃げ切れると思ったら大きな間違いだ。   (M)

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