2020年12月11日 1653号

【読書室/国際人権入門―現場から考える/申ヘボン著 岩波新書 本体800円+税/国際基準で現実を照らす】

 日本社会で起きている様々な人権問題も、国際人権基準に照らしてみれば解決の糸口が見えてくる。

 入国管理法上は、入国警備局が「不法滞在の外国人」を「退去強制事由に当たる」と判断すれば強制的に収容できるので、当人の在留活動は不可能になる。その収容施設の非人道的な処遇は度々問題となっている。

 国際人権規約の自由権規約(日本は1979年批准)によれば、不法在留外国人であっても「拷問、残虐な刑罰の禁止」「自由を奪われたものの人道的扱いの遵守」の保護を受け、かつ、当局の恣意的な判断で長期化する勾留に対し、裁判所の判断を求める権利が認められている。

 また、難民条約からも入管収容は様々な問題がある。難民申請不認定処分の取消訴訟中に「強制送還令書」が出されれば、裁判所は「裁判を行う利益はなくなった」と却下するなど人権侵害が横行している。

 日本は1995年に人種差別撤廃条約に加入している。しかし、人種、国籍などを理由とした差別、人権侵害を禁止、処罰の対象として明文化した法律は制定されていない。2016年に制定されたいわゆる「ヘイトスピーチ解消法」は日本における反人種差別のための初めての立法だ。しかし、内容は主に在日韓国・朝鮮人に対象を限定し、「差別的発言は許されない」としながらヘイトスピーチを違法として明文禁止していない。そのため、現在もネット上ではヘイトスピーチが横行している。

 著者は他にも、子どもの無償教育の権利の現状など国際人権法から見た問題を指摘。国際人権基準に基づく実効ある国内法の必要性を主張する。   (N)
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