2020年12月18日 1654号

【大飯原発 設置許可取り消し 原発推進揺るがす画期的判決】

 12月4日、大阪地裁(森鍵一裁判長)は、大飯(おおい)原発(福井県)3、4号機をめぐる裁判で、原子力規制委員会の審査や判断には看過しがたい誤りがあるとして、設置許可を取り消す画期的判決を言い渡した。

基準地震動を過小評価

 裁判で争点となったのは、大飯原発の基準地震動(将来起こり得る最大規模の地震の揺れ)の妥当性だ。

 適合性審査で規制委員会は、関西電力が申請した基準地震動700ガル(ガルは揺れの勢いを示す加速度の単位)から856ガルに引き上げさせた。

 原告側は裁判で、新規制基準に基づく地震動審査ガイドにある「経験式の持つばらつきも考慮する」に反しており、ばらつきを考慮すれば、基準地震動は1150ガルになる、基準地震動は過小評価されていると主張した。

 判決は原告側のこの主張を認め、「実際に発生する地震の地震規模が平均値より大きい方向にかい離する可能性を考慮して地震規模を設定するのが相当」とし、規制委員会が経験式で算出された地震規模の値に何らかの上乗せをする必要性について何ら検討せずに設置を許可したことには、看過しがたい誤り、欠落があり、違法であるとした。

全国の原発訴訟に波及

 これまでにも原発の運転停止を命じた判決や仮処分決定はあったが、設置許可を取り消したのは初めて。規制委と電力会社には衝撃が走った。判決が確定すれば設置許可自体がなくなるので、この大飯原発を動かすことは未来永劫できなくなる。「2050年温室効果ガスゼロ」の名分で原発維持・新増設まで狙う菅政権の推進路線を直撃した。

 弁護団長の冠木(かぶき)克彦弁護士は「判決によって、全国の原発訴訟でも『ばらつき』を考慮した基準地震動の議論を始めることが必要となる」と語る。規制委員会の設置許可の妥当性を問う裁判は、九州電力の玄海原発(佐賀県)、川内原発(鹿児島県)でも行われており、佐賀地裁は玄海訴訟について来年3月12日に判決を出す。

 判決は仮処分とは違い、国側が控訴すれば直ちに取り消しとはならないが、大飯3、4号機は現在定期点検で停止中だ。1月以降順次予定されていた運転計画も見通しにくくなったと報じられている(12/5朝日)。

 再稼働阻止、全原発廃炉へ、今、運動を強める時だ。

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