2020年12月18日 1654号

【女川原発 再稼働に宮城県知事が同意 民意無視し新設狙う原子力ムラ】

 11月11日、宮城県の村井嘉浩知事は、東北電力の女川(おながわ)原発(女川町)2号機の再稼働について「地元同意」を表明した。大震災で被災した原発、しかも事故が起きた福島第一原発と同じ沸騰水型炉(BWR)の再稼働への地元同意は初めてのことだ。だが、これは、県民世論を無視、近隣住民の不安を置き去りにしたものであり、大飯原発設置許可取り消し判決に象徴される反原発の流れにまったく逆行する。

被災原発で初の同意

 女川原発は、東日本大震災ではM9・0の本震だけでなくM7・2の余震でも想定を上回る揺れに見舞われた。2号機の原子炉建屋の壁からは1130か所のひび割れが見つかった。また原発建屋の3階より上部の剛性(固さ)は完成時よりも7割下がり、2階から地下3階の剛性も25%減ったとされる。

 東北電力は、震災前に580ガルだった基準地震動を1000ガルに引き上げ原子力規制委員会も合格させているが、本体を建て替えたわけではなく、耐震補強工事をしただけだ。国の地震調査研究推進本部は、宮城県沖で今後30年以内にM7クラスの地震が発生する確率は90%程度と想定している。1000ガルを超える地震は来ないなど誰も言えない。

 加えて12月4日の大飯判決は、規制委による基準地震動評価手法を「不合理」「違法」と断じている。

実効性のない避難計画

 現在策定されている避難計画では、原発から5`圏内の3千人の避難が優先され、その間、5〜30`圏の19万5千人は「屋内退避」し、空間線量が毎時500マイクロシーベルトを超えたら避難することになっている。しかし、福島県県民健康調査検討委員会の鈴木元・甲状腺検査評価部会長は2001年当時、「放射性物質の放出が続くと、屋内退避をしても3、4時間後に防護効果がなくなる」と述べていた。「屋内退避」で被ばくする危険があり、30`圏内の住民が不安にかられ一斉に避難した場合、大渋滞が起き、5`圏内の住民の避難は最長で3日弱かかるという試算がある。避難計画そのものに実効性がないのだ。

 河北新報が今年4月に実施した県内有権者の世論調査によると、女川2号機の再稼働に「反対」と「どちらかといえば反対」を合わせて61・5%と過半数を超え、原発の安全性について「不安に思う」と「やや不安に思う」を合わせて74%と不安の声が強い。宮城県の地元同意はこうした民意を無視するものだ。


同意の裏に原発マネー

 立地自治体が再稼働を求める背景には、国などから配られる「電源3法交付金」という名の原発マネーへの依存という現実がある。女川町には、14億円を超える交付金が支払われており、原発立地による固定資産税(約27億円)を含めると、原発マネーは町の歳入309億円(19年度決算)の1割を超える。

 11月25日に町議会が老朽原発である高浜原発1、2号機の再稼働に同意した福井県高浜町に至っては、原発マネーが町の歳入の6割近くを占める(11/26朝日)。

世界の流れに逆行

 梶山経済産業相は「今後10年間、再稼働に全力を注ぐ」と意気込む。経団連は、さらに「新型炉の建設に着手すべく、国家プロジェクトとして取り組みを進める必要がある」とする新成長戦略を発表した(11/9)。国のエネルギー基本計画は2030年度に電源構成に占める原発比率を20〜22%とするが、建設中の2基を含む35基がすべて稼働しても原発比率は15%止まり。稼働期間は「原則40年延長は20年の1回限り」という国自身の緩いルールでも2070年にはゼロになる。原子炉を新設しないと目標が達成できないとなる。

 だが、国際エネルギー機関(IEA)試算では、主要先進国の原発の発電容量は、2040年には2018年の約3分の1に減る見通しという。各国は原発依存から脱却しつつある。日本の動きは世界の流れに逆行する異常突出だ。

 女川原発自身も安全対策工事の完了は目標で2022年。決して推進勢力の思惑通りにはならない。

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