2020年12月18日 1654号

【未来への責任(312)強制動員犠牲者の遺骨を遺族に(下)】

 中部太平洋タラワ島で発掘された遺骨で日本が共同鑑定するために提供を受けた遺骨は162体である。この中から、韓国人の遺族1名、日本人の遺族2名の該当する遺骨が確認された。このこと自体が画期的なことではあるが、さらに鑑定は進んでいる。

 11月20日に国会議員によるタラワ島に関する厚生労働省ヒアリングが実施され、日本でも、遺骨の幼少期の出身地を分析できる安定同位体比検査で、残る遺骨を分析器にかけたことを確認した。遺骨の25%は朝鮮人であると推定されるのだから当然である。

 以前ロシアやフィリピンの遺骨を、根拠もなく日本人の遺骨として持ち帰ったことが大きな国際問題となった。日本の遺族からも厚労省はその姿勢を糾弾されている。そこで厚労省は今年5月より、DNA鑑定ができなくなる現地での焼骨をやめ、検体を日本に持ち帰り、日本人である場合に現地に残る遺骨を持ち帰ることになった。個々の遺族は特定できない段階でも「所属集団の分析」を行うことを遺骨鑑定の第1段階の目標に掲げざるを得なくなった。

 しかし、ここでアジア系とそれ以外の分類はしても、韓国人・台湾人など強制動員された人たちの所属集団分析に対する明確な方針は出していない。批判が起きなければ、闘いが弱ければ、今後も日本人として処理されてしまうのではないか、と見ることができる。

 このような状況下で、米軍の管理のもと米国・韓国と共同鑑定せざるを得ず、日米韓が安定同位体比検査を行っていることは大きな成果だ。それらを通して、強制動員され日本兵として戦死した韓国・朝鮮・台湾の人々の遺骨は故郷に帰らなければならない。

 タラワ島で行われることは、すでにDNA鑑定が始まっている沖縄・硫黄島に、そしてアジア全域の島々の遺骨に適用されなければならない。しかし、これらの島の遺骨は日本が管理しており、闘いを抜きに実現できるものではない。まずはタラワ島で起きている共同鑑定を、日韓の多くの人々に知らせ正しい方向に向かわせなければならない。遺族に時間は残されていない。

 沖縄では、ガマフヤー(遺骨を掘る人)を先頭にして、遺骨の残る南部の土砂を辺野古基地埋め立てのために使うことに反対する運動が起きている。戦没者遺骨問題から私たちが進まねばならない道を示してくれている。

(「戦没者遺骨を家族の元へ」連絡会 上田慶司)

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