2020年12月25日 1655号

【ミリタリーウオッチング 陸がだめなら5000億円イージス艦 敵基地攻撃兵器も続々 軍拡への暴走とめよう】

 菅政権は12月3日の国家安全保障会議(NSC)の協議で、すでに配備を断念した陸上配備型迎撃ミサイル「イージス・アショア」の「代替策」として、新型イージス艦を2隻建造するという「確認」を出した。

 自衛隊はすでにイージス艦8隻を保有している。そこに加わるこの2隻は、海上自衛隊の最新鋭イージス艦「まや」をベースとし、さらに大型化してイージス・アショアで導入予定だったレーダーなどの装備を地上から海上に転用するものだ。こんな前例はどこにもない。防衛省が委託した民間企業の調査では4800億〜5000億円以上の建造費がかかるという。

 もう一つ「敵基地攻撃能力保有」問題がある。自民党国防族議員の「ミサイル防衛検討チーム」(小野寺五典座長)がまとめ、同党政務調査会が8月に提出した「国民を守るための抑止力向上に関する提言」だ。提言は「敵基地攻撃」という用語こそ避けているが、「相手領域内でも弾道ミサイル等を阻止する能力の保有」を求めている。これまで国是としてきた「専守防衛」を明らかに逸脱する政策であり、日本国憲法・国際法にも反する。

 国連憲章2条4項は「すべての加盟国は、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない」とある。これが国際法の原則である。

 憲章51条のいわゆる「自衛権」は、敵基地攻撃を肯定する勢力がよく使うが、憲章の自衛権には厳格な要件があり、行使できるのは相手国の武力攻撃が現に発生した場合のみ。相手の攻撃を見越して先に攻撃する先制自衛は許されない。加えて、国際紛争を解決するための、武力行使でない外交等の手段を尽くすことが厳しく問われる。

アジアの緊張強める

 菅政権は、敵基地攻撃能力については、イージス・アショア代替策ほど検討を進めているようには見えないが、事実はそうではない。今、政府が進めている敵の射程外から攻撃できるスタンド・オフ・ミサイルから長射程巡航ミサイルの開発にしても、護衛艦の空母化、F35の105機もの購入にしても、敵基地攻撃能力に転用可能な装備ばかりだ。この動きがアジア諸国の危機感を一層強めている。

 軍拡への暴走を止める市民の力が、いま私たちに問われている。

藤田なぎ
平和と生活をむすぶ会

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