2020年12月25日 1655号

【沖縄辺野古 米国内から「新基地完成しない」 遺骨で埋め立て 死者を二度殺す】

米シンクタンク報告書

 米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)が11月に発表した報告書に、「(米軍普天間基地の名護市辺野古移設について)困難を抱え続けている。完成期日は2030年まで延び、費用が急騰している。完成することはおそらくないように思われる」と書かれていることがわかった。

 報告書は、CSIS国際安全保障ブログラムのマーク・カンチアン上級顧問が執筆。米海兵隊の戦略見直しと予算の関連について論じた文書に記されていた。

 沖縄国際大学の野添文彬准教授は「執筆したのは海兵隊に関する有名な論客の一人で、米国からも辺野古新基地建設は実現する可能性がかなり低いと思われている」「普天間基地の危険性を一日も早く除去するために新基地を建設するという論理が成り立っていないという県の主張とも符合する」と指摘した。

 軟弱地盤、活断層―もはや米国内部からも実現可能性が乏しいとされる辺野古新基地建設計画は撤回する以外にない。米政府にもさらに要請を強めるときだ。


国会質問も無視

 臨時国会は12月5日、会期末を迎えた。衆院・沖縄北方特別委員会は質疑を行わないまま閉会となった。

 辺野古新基地建設を推進するという首相所信表明演説や外交演説に対し、当然、野党からは質問要請が出ていた。しかし、政府・自民党は茂木敏充外相の外交日程を口実に特別委員会開催を取りやめた。「議会軽視だ」と野党は一斉に反発。「所信表明だけで質疑も受け付けず、説明をしない、議論に応じない菅政権の体質が如実に表れている」と共産党や立憲民主党から抗議の声があがった。

激戦地から土砂調達

 今年4月、沖縄防衛局が沖縄県に提出した辺野古新基地建設工事設計概要の変更承認申請では、埋め立て土砂の主な採取先のひとつが県南部の糸満市と八重瀬町になっている。「島ぐるみ会議いとまん」は11月27日、糸満市と糸満市議会に陳情書を提出した。陳情書では、「魂魄の塔西側の丘陵における採掘作業について、過度な採掘にならないように、法的規制を含めた保全のために施策の検討」などを申し入れた。

 戦後最初に住民によって建てられた慰霊塔「魂魄の塔」西側の山城の丘は、激戦地のひとつで、「広島之塔」「東京之塔」など各都道府県の慰霊塔が並んでいる。「ひめゆりの塔」、その前にはガマ「伊原第三外科壕」もある。ひめゆりの女生徒たちが艦砲射撃「鉄の暴風」の中を逃げまどってたどりつき、多くの犠牲者をだしたところだ。「戦没者の遺骨が混じった土砂を辺野古の埋め立てに使うことは、死者をもう一度殺すことになる」「絶対認められない」と神谷和男糸満副市長に訴えた。

 島ぐるみ会議いとまん事務局の大城規子さんは「激戦地だったこの地では、まだ遺骨も収集しきれていない。そこから土砂を取って辺野古埋め立てに使うなんて、計画を立てたことすら許せない」と声をあげる。

 ところが、問題となっているこの山城丘陵地の沖縄戦跡国定公園内で、糸満市の砕石業者が、自然公園法に基づく開発届け出を県が受理していないにもかかわらず木を伐採するなど採石のための工事を始めていた。沖縄県自然保護課は業者の工事を一時中断させていたことが12月3日に明らかになった。沖縄防衛局からの業務委託で行っていたのかは不明だが、糸満市に申し入れた時期に工事を開始するなど言語道断だ。

 県全域から埋め立てのための土砂を調達するとした変更申請。県内各地で砕石への抗議活動や阻止行動が広がろうとしている。辺野古新基地建設は沖縄戦犠牲者を二度殺す。断じて許されない。 (N)



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