2020年12月25日 1655号

【大阪のコロナ感染、危機的状況に/「医療崩壊」を招いた維新政治/それでも懲りずに吉村劇場】

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。特に大阪では、重症患者の急増で医療体制がひっ迫し、救える命も救えなくなる事態が近づいている。これは人災である。保健医療機関や人員を削りに削ってきた「維新」政治が今日の惨状をもたらしたのだ。

ひっ迫する医療体制

 新型コロナの重症患者数が増加の一途をたどる大阪府。12月13日時点の重症者は158人となり、すぐに運用できる重症者病床の使用率は84%に達した。

 ひっ迫する医療体制に、地域を支える病院は危機感を募らせている。大阪府南東部の基幹病院である近畿大学病院(大阪狭山市)では、重症病床が空いてもすぐに埋まる「自転車操業」が11月以降続いており、一般病床にも深刻な影響が出始めている。

 「一部の病棟の受け入れ患者を減らして50床を40床にしたりしている。人手が足りないからどこかの看護師を動かすとなると、どこかの機能を止めないといけない。そうすると助かる命も助からない。これを医療崩壊と言わずに何と言うのか」(東田有智(とうだゆうぢ)院長)

 人手不足が特に深刻なのが看護師だ。大阪府看護協会の高橋弘枝会長は「元々、慢性的に不足していたところへコロナ対応が重なった。業務の急増で休職者や退職者が相次ぎ、現場の負担がさらに増す悪循環に陥っている」と説明する。

 大阪府医師会の茂松茂人会長は、他府県や自衛隊に看護師派遣を要請した府当局の対応を「場当たり的」だと批判する。「以前から、病床は余っていても運営するスタッフが足りないと言ってきた。ずっと議論してきたのに、あわてて対策を講じても遅い」

 冬場は心筋梗塞や脳卒中の患者が増える時期である。それに人手を要するコロナ患者が加われば、病院にもう余裕はない。まさに医療崩壊のピンチなのだ。

パンク寸前だった

 大阪の医療崩壊は、橋下徹が大阪府知事に就任して以降の「維新」政治が招いたものである。新自由主義路線の権化たる維新は、住民の健康や命を守る保健医療機関もコストカットの対象にした。公立病院や保健所の削減がそうだし、関西最大の看護専門学校だった大阪府医師会看護専門学校も補助金減らしによって閉鎖に追い込んだ。

 「二重行政の廃止」と称して地方衛生研究所の再編(大阪市立環境科学研究所と大阪府立公衆衛生研究所の統合・独立行政法人化)を強行したのも維新である。独法化は全国で初めてのこと。自治体による「検査の責務」を明記した感染症法改正(2016年)の主旨に逆行するものだ。

 このように、大阪の保健医療体制はコロナ以前から基盤が揺らいでおり、感染が再び広がればパンクすることは目に見ていた。それなのに、吉村洋文知事と松井一郎市長の維新コンビは大阪「都構想」の住民投票にかまけ、まともな対策をとってこなかった。

 やったことと言えば、例の「イソジン」や「大阪ワクチン」等の“やってる感”アピールばかり。住民投票を実施するために、コロナ対策は万全と誤解させるフェイクニュースをテレビに出ては流しまくった。

またも責任逃れ

 維新コンビにその反省はまったくない。相変わらずの責任転嫁をくり返している。たとえば吉村は、学術会議の任命拒否や「桜を見る会前夜祭」の問題は「国民の命にはかかわらない」と述べ、この問題を追及する野党やメディアの姿勢を批判した(11/30)。

 「今はコロナに集中すべき」とドヤ顔で語る吉村に対し、ネットでは当然の疑問や批判が噴出した。「では、このコロナ禍の中で住民投票を強行した維新は何なのよ。思いっきりブーメラン」「住民投票を強行して税金100億円も無駄遣いしたことをどう思っているんだろう? それがなければもう少し感染防止できて、飲食店に対する補償も十分できただろうに」

 それでも懲りない吉村は、自身のツイッターに自衛隊の幹部らと一緒に写った写真を投稿。「国民の生命、財産を守って下さいまして、ありがとうございます。違憲のそしりを受けることがあってはならない。保守を自称する国会議員は、命がけで憲法9条の改正をやってくれ。維新は命がけで都構想をやって大将の首をとられた。その迫力が全く感じられない」と書き込んでみせた(12/7)。

 自衛隊に救援を要請する事態を招いたことへの批判をかわすつもりなのだろうが、話のすり替えもはなはだしい。何が「命がけで都構想をやった」だ。不要不急の住民投票を行い、住民を命の危機にさらしているのは維新ではないか。

 今の大阪は日本の縮図である。カネ儲け優先、人命軽視の政治に終止符を打たねば殺される。  (M)

MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS