2021年01月01日・08日 1656号

【医療機関は財政逼迫 政府は至急減収補填を ―SaveMedSaveLivesプロジェクトと交流―】

 国に医療機関への財政支援を求めるSNSの活動「SaveMedSaveLives 医療を守ろうプロジェクト」の取り組みを、都内の大学助教・室生暁(むろうさとる)さんが紹介する交流会が12月14日、オンラインで開催された。(主催:ZENKO〈平和と民主主義をめざす全国交歓会〉関東コロナプロジェクト)

 病院や診療所は危機的状況にある。コロナ対応病院も、それ以外の医療機関も、全国的に財政状態が逼迫(ひっぱく) している。行政はいつまで放置しておくつもりだろう。

オンライン署名6万筆

 このままでは「地域の医療体制が維持できなくなる」と、室生さんは6月26日から「国は赤字の病院を救ってください!」というオンライン署名を一人で開始した(ハッシュタグ #赤字の病院を救って)。同時に開設したTwitterで署名を呼びかけ、たくさんの賛同者が集まった。医療従事者への感謝、政府の対応の遅さへの酷評等々。

 これは黒川弘務東京高検検事長(当時)の定年延長に反対するTwitter世論の盛り上がりと同様だ。約1千万人が賛同した市民の怒りの表現が辞任の引き金となったのは間違いない。室生さんは「政府を動かすためのアピールは大事」と力強く語る。定年延長反対のTwitter世論も、室生さんの運動体も、共に一人から始まったもの。湖上に落とす石が一つでも、より重ければ波紋はより大きく広がる。一つの石は最初に始める人の強い意志だろう。

 波紋が広がっていく。8月4日、タレントの松尾貴史さん、ラサール石井さんがTwitterでシェアすることで署名は急増し、1万筆を超えた。室生さんは「提出したほうがいいのではないか」と思い始め、国会議員にアプローチする方策を模索する。8月25日、「医療機関への公的資金投入を求める4万人署名」を、メディアにプレスリリースした上で自民党、国民民主党、立憲民主党、共産党、社民党に提出。その模様は翌26日にテレビ朝日、東京新聞、しんぶん赤旗で報道された。

 署名が4万6千筆を超えた頃、室生さんは「行政を動かして政策を実現するためには署名活動等の数だけでなく、当事者からの生の声が必要」と、「医療関係者対象アンケート」を9月11日から10月5日まで実施する。そこには、心身ともに疲弊した医療従事者の状態が多数寄せられた。コロナ対策は、医療従事者を救うのが緊急の課題だ。

 「いよいよ署名を政府に届けなければならない」と強く思った室生さんは9月22日、Twitterデモを開始。「#赤字の病院を救って」は、3万8157ツイートされ、トレンド(ランキング)入り。また、10月16日から週1回のペースで国会前を中心にリモートスタンディングを開始した。室生さんは、たびたび議員の動きの鈍さに直面するものの、ついに11月13日、約6万筆の署名と要望書を厚生労働省に提出する。

一人からでも始められる

 様々な医療関係団体からの再三に渡る要望やたくさんの市民から支援の声があがっている。医療機関への減収補填には約6兆円が必要(室生さんの積算)。未執行の第2次補正予算予備費7兆円を使えば、医療崩壊を回避するための大きな一助となる。なぜ政府は動かない、と室生さんは憤りなげく。「今は党が政府を動かしているのではない。緊縮財政を主導する新自由主義者が政治を牛耳っている」と述べる室生さん。しかし、「運動は一人からでも始められる。共に声をあげ続けていきましょう」と締めくくった。

MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS