2021年01月01日・08日 1656号

【ドクター 危ないコロナ抗原定性検査】

 「しんどいなと思ったら、かかりつけ医に電話してな!」「かかりつけ医がいない時は保健所に相談やで!」(大阪府)―相談窓口の変更など新型コロナウイルスの診療体制が大幅に変わりました。今回は、その中での検査の問題点をお伝えします。

 市民から相談された診療所・病院で検査する際に推奨されるのはPCR検査ではなく、インフルエンザ検査と同様の「迅速検査」が勧められそうです。これは、料金がPCRの3分の1の「抗原定性検査」です。政府は1日当たり目標54万件の検査中34万件を「抗原定性検査」で実施すると計画しています。すでに、10月12〜18日に実施した日本感染症学会調査でも、140施設中116施設が抗原定性検査を使っていました。

 この抗原定性検査は日本の3社の製品のみ認可されています。先発企業が出したデータでは、PCR検査で陽性だった27人中、実に17人が陰性でした。感染者の63%も「コロナと違う」(偽陰性)とされるのです。別の検査材料を使ったデータでも、PCR陽性24人中8人が陰性と判定されています。他社のものも似たり寄ったりです。もっと正確ですよという意見ありますが、信頼できません。

 逆に、PCR陰性なのに陽性と判定される偽陽性の人も相当おり、先の感染症学会の調査でも61施設から125件報告されています。間違ってコロナ感染者として隔離などされてしまう可能性が相当あります。

 こんなデータでも認可されたのは、コロナのどさくさに紛れて「特例承認」というずさんな審査が行われた結果だからです。コロナ政策による医学破壊の一つです。

 PCRも完全とはいえませんが、最も信頼できる検査です。コロナ検査の精度が問題になったのがホワイトハウスでの集団感染です。広がった原因はアボット社製の別の種類の「迅速検査」でした。これは当初、偽陰性に出る確率が5%とされていましたが、実は25%だったとのこと。多くの偽陰性者が出て感染が拡大したようです。それでも、この検査は日本の抗原定性検査よりはまだましです。

 抗原定性検査法は簡便ですので膨大な検査ができ、検査キット製造会社は多額の利益を得るかも知れませんが、PCR陽性なのに間違って陰性とされる人がコロナ感染を拡大させる可能性が大きいのです。

(筆者は小児科医)
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