2021年01月01日・08日 1656号

【NHKキャスターに降板説/「学術会議」質問に菅激怒】

 NHK『ニュースウォッチ9』の有馬嘉男キャスターが降板するとの話がある。菅義偉首相に発した質問に官邸が猛抗議。動揺したNHK上層部がキャスター交代を画策しているというのである。『週刊文春』12月24日号が報じた。

 官邸側が問題視したのは10月26日の放送だ。この日の所信表明演説で菅首相が一言も触れなかった日本学術会議の任命拒否問題に有馬キャスターは言及。生出演した菅に対し、「わかりやすい言葉での説明」をくり返し迫った。

 すると菅は不快感をあらわにし、こう答えた。「説明できることと、できないことってあるんじゃないでしょうか」。首相が説明責任を公然と否定し、キャスターを恫喝するなんて前代未聞の所業である。

 しかも、これだけでは終わらなかった。翌日、山田真貴子内閣広報官がNHK報道部に電話で抗議したのである(『週刊現代』11月14日・21日号)。「総理、怒っていますよ」「あんなに突っ込むなんて、事前の打ち合わせと違う。どうかと思います」

 坂井学官房副長官もNHKへの不満を口にした。12月5日夜に行われた会食の場で「所信表明の話を聞きたいといって呼びながら、所信表明にない(日本)学術会議について話を聞くなんて。全くガバナンス(統治)が利いていない」「NHK執行部が裏切った」と語った(12/12朝日)。

 山田も坂井も、菅に引き立てられ現在の地位についた人物だ。怒りの親分に成り代わり、NHK攻撃の旗を振っているのだろう。菅ブレーンの高橋洋一(内閣官房参与)がEテレ電波帯の売却論をぶち上げたのも、局の上層部に対する揺さぶりの一環とみていい。

  *  *  *

 菅にはNHKの番組内容や人事に介入した「前科」がある。官房長官だった2014年、集団的自衛権行使容認の閣議決定をめぐり厳しい質問をした国谷裕子キャスターに激怒。後に降板に追い込んだ一件だ。

 著書『政治家の覚悟』では、総務相時代に自分の方針に逆らうNHKの課長を更迭したいきさつを自慢げに書いている。気に入らない相手には、あの手この手で執拗に圧力をかけ、屈服を迫るのが菅流の陰険パワハラ政治ということだ。

 それにしても、インタビューに対して「事前の打ち合わせと違う」と激怒するとは…。八百長しかできないチキン野郎であることを自ら認めたのと同じである。 (O)

MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS