2021年01月01日・08日 1656号

【読書室/京大よ、還せ 琉球人遺骨は訴える/松島泰勝・山内小夜子編著 耕文社 本体1700円+税/植民地主義を問う返還裁判】

 1930年前後、京都大学の人類学研究者が研究の名目で沖縄や奄美大島の数多くの墓を暴き、「研究材料」として遺骨を持ち去った。その中に今帰仁村百按司墓(なきじんそんむむじゃなばか)に埋葬されていた「第一尚氏」(琉球最初の統一王朝をつくった王家)の遺骨が含まれていた。

 盗掘された遺骨の返還を求め、第一尚氏の子孫と彫刻家・金城実さん、照屋寛徳衆院議員、松島泰勝龍谷大学教授は2018年12月、京都地裁に「琉球遺骨返還請求訴訟」を起こした。

 日本政府は、アイヌを先住民族と認め不十分ながら施策も行う一方、沖縄については独立国家であった琉球国を強制併合した歴史に頬かむりして先住民族であることを認めようとしない。

 2007年国連総会は「先住民族の権利に関する国際連合宣言」を採択し「すべての民族が異なることへの権利、自らを異なると考える権利、および異なる者として尊重される権利を有すること」を確認。「集団および個人としての人権の享有」「差別からの自由」「自己決定権」をはじめ「宗教的伝統と慣習の権利、遺骨の返還」を認めた。実際アメリカやオーストラリアの先住民には遺骨返還が行われている。

 しかし、日本人類学会はこの裁判が提起されるや京都大学に「国民共有の文化財」である遺骨を返還しないよう求める要望書を提出した。「学問」の名による先住民族に対する権利侵害だ。金城実さんも「琉球人を見世物にした人類館事件の再来だ」と怒りを込めてこの裁判を闘っている。

 先に発刊された『大学による盗骨』(2019年、耕文社)の続編となる本書。植民地主義とは何かを問う一冊である。  (N)
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