2021年01月15日 1657号

【MDS コロナ危機を克服し社会を変える18の政策 教育 誰もが教育の機会を保障される社会へ 鍵は教育の完全無償化】

 新型コロナウイルス感染症の拡大は、教育の分野にも深刻な影響を与えた。

 科学的根拠もなく行われた全国一斉休校措置は、昨年度末から今年度初めの卒業、進学・進級、入学という節目に教育現場に大混乱をもたらした。何より教育の権利主体である子どもや保護者、学生に現在も深刻な影響を与え続けている。

 教育費の自己負担に依存してきたこれまでの教育政策を抜本的に改め、「教育の機会均等」原則を初等・中等教育から高等教育まですべてに適用しなければならない。多くの若者たちが大学を卒業する段階で数百万円の借金を背負うような社会を改めることが何より問われている。

学費が払えない

 コロナ禍による経済危機は、高学費を自己負担や借金で補う高等教育の場で深刻な問題を引き起こした。保護者の収入や自身のアルバイト収入が減り、「(大学や専門学校等の)学費が払えない」「生活費が足りない」「奨学金を利用したいが、将来返済できるか不安」「リモート授業は高い学費に見合っていない」などの声が多く上がっている。いまや大学生等の半数近くが利用する貸与型奨学金は、その返済が大きな経済的・精神的負担となっている。非正規雇用4割という雇用環境は、返還困難者をますます増やしていく。

 日本も批准している国際人権規約「中等・高等教育の漸進的無償化」条項に沿って、高等教育費の私的負担を抜本的に改め、公的支出を国際的水準に到達するよう教育政策の転換を進めることは待ったなしだ。

 コロナ禍の学生実態調査結果が12月18日、公表された。それによると、コロナ感染拡大の影響で10月までに全国の国公私立大学・大学院を退学・休学した学生は5238人に上っている。退学は1033人、休学が4205人だ。うち新年度に入学した学部1年生は、それぞれ378人(約37%)、759人(約18%)となっている。

学費免除と生活資金援助

 文部科学省は、バイト収入が大幅に減った学生への無利子奨学金再募集や内定取り消しの学生が留年した場合の貸与期間1年延長といった対策を発表したが、貸与型奨学金は借金を背負う世代を増やすだけだ。抜本的な政策転換を行わない限り、リーマンショック不況に直撃された「氷河期世代」の再現となる。

 「18の政策 教育―だれもが教育の機会を保障される社会へ」では、コロナ危機に対し、とりわけ高等教育での緊急対策として、大学等の学費免除、学生の生活資金給付、貸与型奨学金の一律返還免除等をあげ、そのための国公立大への交付金と私学助成の拡充を求めている。同時に「教育の機会均等」原則を徹底させていく道筋としての無償化、教職員数拡充、教育条件整備などを打ち出している。

20人学級実現こそ必要

 全国一斉休校から学校再開の過程は、「40人学級」という国際水準にはほど遠い教育環境下に日本の子どもが置かれてきたことを可視化した。今、ようやく2021年度から5年かけて「小学校全学年で35人学級」との方針が政府から打ち出された。あまりに遅すぎるが、意思があればできることが明らかになった。

 だが、政府まかせでは全く不十分な水準となり、中学校・高等学校は置き去りにされる。18の政策が掲げる「初等・中等教育の完全無償化を実現し、教職員数の拡充と1学級あたりの生徒数の削減(20人学級の実現)、教室環境整備による教育条件の改善」を進め、「高等教育の完全無償化に向けた工程表」を立案していくことを、政府に強く求めなければならない。

 緊急対策を実現し、5年、10年後に向け、教育政策を抜本的に変革する闘いが必要になっている。

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