2021年01月15日 1657号

【18の政策とは/第1回/日本国憲法(2)/憲法改悪を阻止し3大原理を実現する 自衛の名で派兵・戦争】

 安倍前政権は、2014年閣議決定で集団的自衛権を容認し、その具体化として15年戦争法を強行成立させた。集団的自衛権とは、自国が攻撃されていなくとも、同盟国への攻撃を自国への攻撃とみなし「自衛戦争」として正当化するものだ。

 だが、憲法第9条1項が交戦権を否定したのは、過去、多くの侵略戦争が「自衛」の名の下に行われてきた事実から、「自衛戦争」を含む一切の武力行使を許さないためだ。これは、現憲法制定時の国会で、当時の吉田茂首相が明言したことでもある。

 2001〜03年、米ブッシュ政権は、9・11テロ事件を受け、「自衛のための先制攻撃は許される」との立場をとり、アフガニスタンとイラクを侵略。政権転覆し、傀儡(かいらい)政権を樹立、現在に至る国土荒廃と民衆弾圧をもたらした。

 戦争は常に「自衛」の名の下に行われる。改憲4項目はこの事実から市民の目をそらせ、集団的自衛権行使・恒久的海外派兵を合憲化するものだ。

 また、自民党案の第9条の2には内閣総理大臣を「最高の指揮監督者」と定める。現在、自衛隊の指揮について定めているのは、「指揮監督権」を内閣総理大臣に与えている自衛隊法の規定のみである。自衛隊の活動は国会が定める法によらなければならず、その法の範囲で総理大臣が自衛隊が指揮監督する権限を行使するにとどまる。

 しかし、自民党案は、権限ではなく「指揮監督者」という地位を与える。法の上位である憲法によって、内閣総理大臣が全面的に自衛隊を指揮監督することとなる。好戦的な戦争法にさえ縛られず、国会の関与を排除し、まさに総理大臣が自衛隊の任務を創造し自由に派兵できる憲法に変えようという狙いだ。

 加えて、重大な論点も潜んでいる。

 自民党の「改憲4項目」のQ&Aは、改憲理由を(1)自衛隊を違憲とみなす憲法学者が多い(2)中学校の教科書の多くが自衛隊違憲論に触れている(3)国会にも自衛隊を違憲とみなす政党が存在するとしている。これらを改憲理由とする自民党の立場は、基本的人権が保障する学問の自由、言論の自由、思想信条の自由を頭から否定するものだ。

 憲法前文にあるとおり、日本国憲法は「国民」が確定したものだ。主権者である国民が、自らの権限を付託する立法・行政・司法に活動を命じ、その適否を判断する基準となる。ところが自民党は、自らとは異なる考えを表明する市民が存在することを理由に改憲し、異論を封殺しようとしている。これは、民主主義の発展の歴史を逆行させるものだ。  《続く》
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