2021年01月15日 1657号

【植民地主義それ自体の問い直しへ/女性国際戦犯法廷20周年シンポジウム/未来につなぐ次世代の活動】

 2000年12月、「日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷」。天皇ヒロヒトに「有罪」が言い渡された瞬間、会場は割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。

 20年後、日本では歴史修正主義が幅を利かせ、「慰安婦」被害者の訴えは消し去られ、マイノリティへのヘイトが横行している。法廷を振り返るとともに、成果を未来に活かそうと12月12日、オンラインで国際シンポジウムが開かれた(主催―女性国際戦犯法廷20周年実行委員会)。

 首席検事を務めたウスティニア・ドルゴポルさん(オーストラリア・フリンダース大学准教授)が基調講演。「慰安婦」の運動と現在の#MeToo運動やBLM(黒人の命を軽んじるな)運動の共通点として「マイノリティの女性や有色人種の人びとが担う重要な役割」を上げ、「#MeTooというフレーズを造ったのは有色人種の女性。BLM運動は、黒人が国家により暴力を受けているシステムに焦点を当て、世界中の黒人や先住民にとっての社会的・経済的・政治的な平等の追求を目標としている」と述べた。

 元日本検事団の阿部浩己・明治学院大学教授は「日本の植民地支配を論ずる場合、1879年の琉球王国併合を欠かすことはできない。日本の内なる植民地として、沖縄には占領地と同じ意識のもと大量に『慰安所』が設置された」と指摘し、「朝鮮や中国、琉球などへのむき出しの差別を扇動する言動が社会を覆っている。私たちは日本の植民地支配それ自体の法的責任と正面から向き合う責務を強く自覚すべき時を迎えている」と強調した。

各国の若者が活動交流

 シンポジウムの大きな収穫は「次世代からの提言〜未来へつなぐ」で各国の若者たちが活動を交流し、課題を共有したことだろう。東ティモール、在日3世、フィリピン、台湾、米国、韓国、日本から、証言を聞く会やスタディーツアー、インターネットを通じた情報拡散、「平和の少女像」撤去反対など、多彩な取り組みが報告された。

 日本の若者グループ「希望のたね基金」メンバーは「各国の発表を聞いて、日本の教育やメディアのあり方に疑念を持った。日本では、『慰安婦』問題を知らないというところから変えないと始まらない。韓国のアーティスティックなアイデアのキャンペーンなど、若者を巻き込んで発信する前向きな方法に学びたい」と感想を語っている。

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