2021年01月22日 1658号

【ミリタリー・ウォッチング 1・22 核兵器禁止条約発効 日本こそただちに批准を】

 核兵器禁止条約の発効(1月22日)が間近に迫った。50か国目の批准となった中米ホンジュラスに続いて12月11日には西アフリカのベナンが新たに批准。批准国・地域は51となった。

 核兵器禁止条約の採択にあたっては国連加盟193か国中122か国が賛成し、現在、批准の前段階にあたる署名は86か国・地域に達し、今後さらに批准国の増加が期待される。核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)は、締約国が100を超え明確に国際社会の半数以上となることを直近の目標とした。

 この歴史的瞬間を前に、日本政府は「今も(核廃絶へ核保有国と非保有国の)『橋渡し』をすると言うばかり。中身はない」(長崎原水禁・川野浩一さん)態度に終始している。1月7日の記者会見で中国新聞記者がぶつけた質問に対し、菅首相は「核禁条約の批准はしない」「締約国会議へのオブザーバー参加も慎重に対応せざるを得ない」と事実上の不参加宣言を事務的に答弁した。

 世界でも憂慮すべき状況が続く。イランは4日、核関連施設でウランの濃縮度を20%に引き上げたと発表した。2015年の核合意より前の、核兵器製造に近づく危険な水準への逆戻りで、看過できない事態だ。

 2月には米露間で唯一残された核軍縮の枠組みである新戦略兵器削減条約(新START)が期限を迎える。核軍縮の枠組み「ゼロは許さない」が世界の声だ。

 8月には、パンデミックを理由に1年延期となっていたNPT(核拡散防止条約)再検討会議が開催予定だが、前回2015年の同会議は「中東非核地帯構想」の実現に向けた国際会議の開催に米国が反対したことで決裂し、最終文書案に合意できなかった経緯がある。2度目の失敗は「NPT頓挫」を意味する。

市民が声上げる時

 これ以上核保有国らの無責任な交渉に任せていてはならない。非核保有国や市民が積極的に介入し、論議をリードすることが今まで以上に重要となっている。

 核廃絶を求める市民の運動がすでに確実に影響を与え始めている。条約が採択された17年後半以降、世界の94金融機関が核兵器製造企業への投資を取りやめた。投資額は555億ドルに上る。こうした動きは、核保有国や「核の傘」の下にある国の動向に少なくない影響を与えることになる。

 被爆国である日本が核兵器禁止条約に背を向けず誠実に向き合う姿勢を示せば、世界に大きな勇気と希望を与えることができる。そのために、まず一人ひとりが地域、自治体から声を上げることだ。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会

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