2021年01月29日 1659号

【1659号主張 特措法・感染症法の罰則許すな 人権守れ 検査・医療・補償を】

医学会も罰則反対

 1月18日、通常国会が開会した。菅首相は施政方針演説で、新型コロナウイルス感染拡大の責任を若者と飲食店に押しつけ、実効ある何の対策も示さない一方、罰則導入を明言した。政府は22日にも新型コロナ特別措置法・感染症法の改悪案を閣議決定し、行政の勧告に従わない市民・事業者への罰則(過料50万円以下、懲役1年・罰金100万円以下など)の付加を狙う。

 しかし、権力の恣意的判断で市民の人権を制限することは断じて許されない。罰則導入に対し、日本医学会連合、公衆衛生学会、日本疫学学会がただちに反対声明を出した。声明は、罰則を伴う強制は恐怖や不安・差別を引き起こす、入院勧告などもその措置に伴う社会的不利益に十分な補償(就労機会・所得保障、医療・介護・育児サービス等の無償提供)を行うことで市民の積極的な協力につながる、とする。当然だ。

 メディアや野党の一部も強制・罰則導入をあおる。しかし、ハンセン病やエイズなど感染症対策の名による差別、人権破壊の苦い歴史を踏まえれば、コロナを口実にした罰則導入は明確に反対しなければならない。

検査・医療へ公費投入を

 菅政権のでたらめさは、市民の命と生活を守る政府の責務を放棄し、感染拡大の原因を要請に従わない市民に責任転嫁するところにある。市中感染拡大に歯止めがかからない今、緊急に必要なのは検査・医療体制への大胆な公費投入だ。感染多発地域・施設はもちろん、希望する人に広範囲・大規模なPCR検査を行い、陽性者を医療保護(入院、療養施設)に置けるような態勢をつくることだ。

 ノーベル賞学者の本庶(ほんじょ)京都大特別教授らも「医療機関と医療従事者への支援拡充」「PCR検査能力の大幅な拡充と無症候感染者の隔離を強化」などを政府に提言した。「『感染しているかも』と思ったら即座に検査を受けられる体制を」(本庶教授)。これが政府が拒む国際的常識なのだ。

声上げれば動かせる

 検査拡大を求める声は自治体・政府をつき動かし始めている。広島県は、特に感染者が多い広島市の住民など最大80万人に無料のPCR検査実施を決定。検査拡大を拒んできた維新大阪市政も、高齢者・障害者施設の職員約2万人にPCR検査を実施する。持続化給付金、家賃支援の1月15日申請打ち切りに固執していた政府も申請期限延長を余儀なくされた。

 今こそ、菅政権や自治体に対し、検査・医療の抜本的拡充、生きるための給付・補償に財政支出させる市民の運動を強める時だ。要求を束ね、各自治体交渉、2月中央省庁要請行動で突きつけよう。通常国会を包囲し、特措法等罰則導入を阻止し、根本的政策転換を迫ろう。

  (1月18日) 
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