2021年01月29日 1659号

【MDS18の政策とは/第1回/日本国憲法(4)/憲法改悪を阻止し3大原理を実現する 災害対応「緊急事態」のごまかし】

 改憲4項目では、一見、大規模な自然災害の実を緊急事態に該当する事象として想定しているかに見える。だが「大地震その他の異常かつ大規模な災害」とされており「その他の…災害」には、戦争が含まれる。

 実際、有事関連法制の一つ「国民保護法」では、「武力攻撃によってもたらされる人的・物的災害」が「武力攻撃災害」として規定されている。2017年3月の衆院憲法審査会で、自民党憲法改正推進本部長(当時)船田元は「外国からの急迫不正の侵略やあるいは大規模な内乱、そういったあらゆる事態を想定して、緊急事態を宣言するということも考えておく必要がある」とその焦点を戦争・内乱に当てている。内閣による立法権行使、自衛隊の最高指揮官としての地位を得た内閣総理大臣への権力集中という自民党改憲4項目は明治憲法の緊急条項や戒厳条項に照応する。

緊急対応は現憲法で可能

 自民党や右派言論人は「想定外の大規模な自然災害では、政府に権力を集中しなければ国民の生命・財産を守れない」という。だが、災害など緊急時の備えは現行憲法下でも可能だ。

 憲法第54条は、参議院の緊急集会が国会に代わって法律や予算を暫定的に決定することとしているし、第76条では参院緊急集会も招集できない状況では、罰則付きの政令を制定する権限を内閣に与えている。この第76条を受けて、災害対策基本法(1961年制定)は、生活必需品配給や物価統制等について、内閣総理大臣に緊急政令を発する権限を与え、市町村長には設備物件の除去、土地・建物の収用・使用、住民に対する業務従事指示の権限まで与えている。

 現行憲法の下で、大規模災害下での市民生活を守る態勢は作れる。したがって、人権侵害の危険性を考えれば、災害対策に緊急事態条項は不要かつ危険だ。しかも、現憲法・災害対策基本法で自然災害に対応できるのだから、自民改憲案は、ますます戦争遂行体制に狙いを絞ったものだと断じることができる。

 また、改憲4項目では「緊急事態」を口実に与党議員たちが任期を恣意的に延長することに利用する可能性がある。自民党は「緊急時には任期切れでも選挙せず国会審議を続けることが必要である」と主張する。だが、安倍前政権は、野党による憲法に基づく臨時国会開催要求すら拒否し続けてきた。コロナ危機下でもそうだ。緊急事態宣言を発するのも解除するのも与党政権だ。

 緊急事態条項にかけた狙いは、緊急事態を延々と続け、与党議員の地位、ひいては自民党が政権に居座り続けることに他ならない。主権者たる市民の選挙権行使まで否定するものだ。

       ≪続く≫
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