2021年02月05日 1660号

【MDS18の政策とは/「教育の充実」の名で国家主義教育 第1回/日本国憲法(5)/憲法改悪を阻止し3大原理を実現する】

 コロナ禍の下で迎えた2020年5月3日、安倍前首相は「今回のような未曽有の危機を経験した今、緊急事態において国民の命や安全を何としても守るため、国家や国民がどのような役割を果たし、国難を乗り越えていくべきか、そして、そのことを憲法にどのように位置づけるかは、極めて重く、大切な課題」と述べ、緊急事態条項について憲法審査会での議論の推進を訴えた。世論の反発が極めて大きい9条改憲はひとまず置き、コロナ危機に乗じた迂回路として緊急事態条項創設に焦点を当てたのだ。

国家のための教育へ

 改憲4項目は「憲法26条の改正」に「教育の充実」と見出しを付す。だが、維新が求める「教育の無償化」にすら触れていない。第26条「改正」の眼目は、第3項を追加し、教育が「国の未来を切り拓くうえで極めて重要な役割を担う」と教育の国家的位置づけを明確にすることにある。

 「国の未来を切り拓く」という文言は第1次安倍政権が改定した教育基本法の前文に登場する。改定教育基本法は「公共の精神」「伝統の尊重と継承」「国を愛する態度」を教育の目標の中に新たに加え、旧教育基本法での「個人の尊重」の原理と相対化する。

 教育基本法は「教育の憲法」とも呼ばれる。戦前、子どもたちを国家のために滅私奉公する臣民に育て、戦争に教育が深く利用されたことの反省から「個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期する」とし、憲法に沿った国民の育成を目的とした。

 第1次安倍政権は、教育基本法に「公共の精神」などを付け加え、「我が国の未来を切り拓く」ものとして位置づけ戦前の国家至上主義、国の発展のための人材育成の手段におとしめようとした。だが、教育基本法は法律であり、国会の採決で再改正することは可能だ。自民党は、国民投票を経なければならない憲法に同等のことを書き込むことで、教育を国家発展のための道具として永遠に位置づけることを狙ったものだ。

 これは、菅政権の日本学術会議任命拒否にも表れている。学術の成果は教育に反映される。政府方針に役立たない学術分野は冷遇し、反する学者は排除する。学術の反映である教育を、国家を支える人材育成の道具とする役割しか担わせない。国家に隷属する市民の教育しか許さないのだ。

  *   *   *

 自民党改憲4項目は、「国益」=グローバル資本の利益のためには戦争をも辞さず、それを遂行する統治機構を盤石とし、個人を国家に隷属させる政治体制を作り、教育をも組み込む。 自民党・安倍前政権は、閣議決定で集団的自衛権行使を容認し、戦争法制定を強行した。憲法が定める平和主義、交戦権の否定、戦力不保持を下位の法律で実質書き変えた。改憲を阻み、戦争法を廃止し、憲法を市民の手に取り戻さねばならない。《この項、終わり》
MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS