2021年02月05日 1660号

【避難者追い出し強要許さない ひだんれんらが福島県交渉】

 福島県が、国家公務員宿舎に入居中の区域外避難者に対し、追い出しの圧力と親族を巻き込む人権侵害を行っている。ひだんれん(原発事故被害者団体連絡会)など3団体は1月22日、県生活拠点課と交渉し抗議したが「問題のある行動とは考えていない」と謝罪を拒否した。コロナ禍でも緊急性があるため交渉は初めてズーム使用で行われた。

 県当局は12月14日付で福島在住の避難者親族31世帯に文書を送り付けた。事情や経過を知らない両親らは「転居されない場合は訴訟など法的手段に移行せざるを得ない」等の文書に、子どもがどんな「不正」を働いたのかと心を痛め「勘当」する事態まで生じた。

 ところがこの文書について、当局は「意向を伺うための調査のお知らせ」だと弁明した。文書発送後には2名の職員が実家を戸別訪問している。そこでは「1月中に出てくれ」「溜まった家賃相当分を払え。そうでないと私たちの給料が出ない」「出なければ裁判にかける」と迫ったのが実態だ。独立した子どもの身の振り方に、年配の両親まで巻き込んで退去に協力を促す。これは意向調査などではなく親族を利用した脅迫であり、行政による家族への介入・分断だ。

 戸別訪問の際の避難者親族の住所地調べについて当局は「親族の住所は、緊急連絡先、住民票、戸籍抄本からつかんだ」ことを明らかにした。避難者本人の合意もなく、本人に利益をもたらす手続きとしてでもなく、定めもない事例で住民票等を引き出すのは個人情報保護に反し職権乱用もはなはだしい。当局はここでも「本人の承諾がないと親族へ連絡できないとは考えていない」と開き直った。

 参加者からは「県職員の態度を見て、いったい誰に寄り添っているんだと思う。人災なのに、被害県の福島がこれでは」(「避難の権利」を求める全国避難者の会・中手聖一さん)「原発事故避難者なのに親族が助けるのが当たり前という姿勢は、自己責任論に通じ前近代的な考えだ」(ひだんれん・熊本美彌子さん)など県への怒りと不信の発言が相次いだ。

 避難の協同センターの瀬戸大作事務局長は「明らかな人権侵害であり、弁護団とともに法的に対抗したい。背景には区域外避難者の追い出し実行があり、これを許さない闘いを提訴も含めて提起したい」と訴えた。

 2月には親族訪問即時停止・追い出し強要を許さない集会が予定される。並行して福島県への抗議メール・ファクス・電話など機敏な対応が呼びかけられた。

<抗議先>福島県生活拠点課 電話 024-521-8306 Fax 024-521-8369
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