2021年02月12日 1661号

【1661号主張 医療・補償を 自治体・政府交渉へ 特措法罰則導入は撤回だ】

感染防止せず人権侵害

 1月29日に審議入りした新型コロナウイルス特別措置法と感染症法等の改悪案。2月3日には、菅政権・自民党らが実質2日間の審議で国会通過を強行した。

 政府は当初、入院拒否に懲役1年以下または100万円以下の罰金を科そうとしていた。この懲役は外され、50万円以下の過料となった。また、休業や営業時間短縮の命令に反した事業者に対しては30万〜20万円以下の過料となった。

 懲役―刑事罰が削除されたのは、医療や保健所など現場の強い反対の声や世論の批判によるものだ。

 しかし、罰則が導入されたことに変わりはない。かつてハンセン病など「まん延防止」の名で患者・感染者への著しい人権侵害が行われた。現場の声は、市民の協力をむしろ困難にする罰則・強制は感染拡大防止に逆効果と反対する。罰則導入は断じて許されない。

菅政権の強権

 なぜ菅政権は罰則導入に固執するのか。新型コロナ対応の検査・医療体制拡充を怠って感染拡大を引き起こした政府の無策を棚上げし、市民へ責任を転嫁する。さらには、強権的な支配につなげるためだ。

 菅政権の強権ぶりは、特措法に新たに盛り込まれた「まん延防止等重点措置」にも見られる。緊急事態宣言同様の制約を課すにもかかわらず、要件は「政令で定める」だけ。国会報告すらなく、権力によるいっそう恣意的な運用と人権制限の内容を持つ。

 感染拡大防止の対策とならないばかりか、人権侵害と監視―警察国家への道を開く特措法、感染症法改悪は撤回しかない。

政策転換を迫ろう

 2020年度第3次補正予算が成立したが、医療機関の減収補填をせず、大規模PCR検査のための予算もない。持続化給付金が打ち切られる一方で、感染拡大をあおったGoToキャンペーンに1兆円、軍事費に3千億円(潜水艦、地対空ミサイルなど)も計上した。命もくらしも放置だ。

 現状は、入院拒否どころか、入院もできず自宅待機で死亡する事態の続出だ。緊急に必要なのは、大規模な社会的検査実施、全陽性者の入院・医療保護など態勢整備、休業を強いられた労働者・事業者の補償だ。さらに、コロナ特措法そのものを根本的に見直し、緊急事態宣言や罰則でなく、人権を尊重しつつ命を守る科学的な感染症対策を実現しなければならない。

 政策転換は可能だ。広島県は、広島市中心部の全住民と就業者にPCR検査を実施する。介護現場などでの定期的検査も始まっている。2月10日、ZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)は検査・医療・補償・雇用を求めて中央省庁要請行動を行う。地方自治体・政府への要請を強めよう。

  (2月3日) 
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