2021年02月12日 1661号

【米 バイデン就任 トランプの暴挙阻んだ労働者・市民/新政権の行方も左右】

 1月20日、ジョー・バイデンが第47代米国大統領に就任した。

 発足したバイデン政権についてゴールドマンサックス元共同経営者ブルース・ヘイマンが「ウォール街(金融業者)を含め、人選に非常に満足。素晴らしい人事」と評するように、グロ―バル資本は期待をかける。国務長官も国防長官も軍事投資企業幹部というのが政権中枢の実像だ。

運動が押し込んだ政策

 そのバイデンは、コロナ禍の中、12月に決定された市民への直接給付金1人600j(6万3千円)を2千j(20万1千円)に増額。最低賃金を15jに引き上げ、失業給付を9月まで400j上乗せするとした。

 就任当日には15の大統領令に署名した。主要なものは、▽気候変動に関するパリ協定への復帰▽WHO(世界保健機関)からの脱退取り消し▽環境団体や先住民が反対する、カナダから米中西部まで原油を運ぶ「キーストーンXLパイプライン」の建設認可取り消し▽連邦庁舎内でのマスク着用や社会的距離の確保の義務化▽メキシコ国境の「壁」建設に連邦資金を振り向ける根拠になっていた非常事態宣言の解除命令―などだ。1月21日には米ロ新戦略兵器削減条約の5年間延長を目指す方針も明らかにした。

 バイデンの現段階の政策は、トランプ政権の悪政を取り消す以上に積極的な内容を含んでいる。それは、コロナ危機の下で、市民、労働組合、DSA(アメリカ民主主義的社会主義者)、民主党内進歩勢力などの要求と運動に押されたからだ。

 1月5日のジョージア州の連邦上院議員選挙(決選投票)で民主党が20年ぶりに2議席を獲得し、下院に加え上院も実質過半数を確保した。この選挙の最大の争点は1人2千jの個人給付だった。バイデンは当初反対の立場だったが、賛成に転じた。BLM(黒人の命を軽んずるな)運動、労働組合、社会主義・進歩勢力の闘いが民主党候補を押し上げる中で転換を余儀なくされたことは象徴的だ。

極右クーデターとめた

 一方、大統領選で敗北したドナルド・トランプは1月6日、ホワイトハウス近くに数千人の支持者を集め、「選挙の勝利は極左の民主党の連中によって盗まれた」「議事堂へ歩いて向かおう。俺もいっしょに行く」と演説。現職大統領として議会突入をけしかけた。

 白人至上主義者たちは、大挙して連邦議会を襲撃、一時占拠。大統領選の結果を確定する上下両院合同会議を中断させた。議会の警備担当警察官が暴徒と記念撮影するなど、政府機関内に呼応する動きがあったことも報じられている。

 彼らは武器を持ち議事堂の内部を荒らしまわっただけではない。共和党下院議員は、民主党のナンシー・ペロシ下院議長を「死刑」だとフェイスブックに上げていた。逮捕された極右活動家は、DSAのアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員を「暗殺する」とSNSに投稿していた。

 これはトランプが議会内外の支持者らを利用して仕組んだクーデターと言うべき事件だったのだ。

 しかし、労働者、市民が直ちに反撃に立ち上がり、暴挙を阻んだ。下院ではDSA議員などがトランプの大統領職罷免、暴力を扇動した共和党議員の免職や暴徒同調者の調査を要求する法案を提出。1月13日には、下院がトランプの罷免を求める2度目の弾劾訴追決議を可決した。危険な策動は封じられつつある。

 20日の大統領就任式が平穏に行われたことを、メディアは州兵による厳戒態勢の力と強調する。だが、それだけではない。客室乗務員組合と輸送通信労組はワシントンDCに行き来する飛行機・列車への暴動参加者の搭乗を拒否した。ワシントンDCの合同交通労組、ユナイト・ヒア労組はバス、地下鉄、ホテルの労働者の安全確保のために暴徒の受け入れに反対した。

就任式時にもスト

 就任式当日も労働者は闘いの真っ最中だ。オカシオコルテスは式を欠席し、ニューヨーク・ハンツポイント地区で運輸労働者チームスターズ労組のピケットライン激励行動を行った。1400人の組合員が経営者提示の時給35k賃上げを拒否してストライキに突入、70k賃上げを獲得した。

 DSAはクーデター策動に、「権利を闘い取ろう 民主主義のために闘おう」と声明(別掲)。コロナ救済金や緊急医療、警察予算削減、労働者権利保護などを求め、闘いで展望を切り開こうと呼びかけた。バイデン政権下で今、DSA、市民・労働者の闘いはさらに広がろうとしている。



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